妊娠9週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子

河野照子 先生
医学博士
日本産科婦人科学会専門医
日本周産期・新生児医学会専門医
日本超音波医学会専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠9週に知っておきたい大切なポイントは?
つわりのピークは妊娠8〜10週頃で、9週の今はちょうどその真ん中に当たる時期。妊婦さんにとってはつわりでしんどい状態が続きますが、おなかの中で赤ちゃんは日々成長し、ヒトらしい姿に近づいています。筋肉も発達して、からだを動かしています。そんな妊娠9週頃の赤ちゃん&妊婦さんの様子や、気をつけておきたいアドバイスをご紹介します。
妊娠9週は妊娠何カ月?
妊娠9週は妊娠3カ月の第2週です。おなかの赤ちゃんはヒトとしての姿がほぼ完成形に近づいています。
妊娠9週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠9週:赤ちゃんの大きさは?
頭からお尻までの長さが3cm程度になります。お尻の場所にあったしっぽもなくなって、生殖器も発達していきます。
妊娠9週:赤ちゃんの様子は?
赤ちゃんの筋肉が発達して、もぞもぞと動くことができるようになっています。妊婦さんが胎動を感じることができるのはまだ先で、妊娠中期に入ってからです。
妊娠9週:赤ちゃんの発達は?
目、鼻、口、耳といった顔のパーツができてきましたが、まだ機能はしていません。この時期の赤ちゃんは、1分間に170〜180回という最も早い心拍数になっています。妊婦さんの心拍が1分間に65〜75回程度ですから、2倍以上の速さで動いていることに。
妊娠9週:妊婦さんのからだは?
妊娠9週:妊婦さんのからだの様子は?
妊娠9週はまだまだつわりのピークです。吐き気や嘔吐が続いたり、強い眠気や疲れやすさを感じることが多いでしょう。ホルモンバランスの変化によって、気分が不安定になったり、涙もろくなったりします。
また、おっぱいが敏感になり、張りや痛みを感じることも。これは授乳に向けてからだが準備をしているためで、これからどんどんサイズが大きくなっていきます。
妊娠9週:妊婦さんのおなかの大きさは?
子宮は大人の握りこぶし大の大きさに。おなかが少しふくらみ始める人もいますが、まだ妊娠していることがはっきりわかるほどではありません。つわりで体重が減る人もいれば、少し増える人もいて個人差があります。
妊娠9週:妊婦さんが気をつけること・することは?
立ちくらみに注意
赤ちゃんに栄養を届けるため、妊娠中はたくさんの血液が作られます。この調整がまだ不安定な妊娠9週頃に、脳への血流が一時的に不足して立ちくらみが起こることがあります。また、つわりで食事が十分に取れなかったり、食間が開いたりすることでも、血糖値が下がって立ちくらみが引き起こされます。
立ちくらみを予防するためには、座った状態や寝た状態から立ち上がるとき、急に動かずゆっくりとからだを起こすように心がけましょう。また、空腹の状態を避けるために、少量ずつでも何か食べると良いでしょう。
嗜好の変化
妊娠9週頃になると、ホルモンの変化やつわりの影響で味覚・嗅覚が敏感になり、嗜好の変化が現れることがあります。酸っぱいものやしょっぱいものを強く欲したり、逆に甘いものや脂っこいものが苦手に感じられることも。食べ物の匂いや味が気持ち悪さを誘発するため、シンプルで匂いの少ないクラッカー、白米、ゆでた野菜などを好む傾向があり、スパイスの強い料理を突然受け付けなくなるケースも多いです。
妊娠9週はまだ胎児が小さく、身体的な圧迫感は少ないものの、ホルモンの変化が嗜好にダイレクトに響く時期です。これらの変化は一時的で、多くはつわりが落ち着くとともに嗜好も安定してくるでしょう。
つわり中の脱水症状に気をつける
つわりで嘔吐を繰り返している場合でも、こまめに水分を補給して、脱水症状を予防することが大切です。水やお茶の味にも不快さを感じるときは、炭酸水やレモン水を試してみるのもおすすめ。ビタミンや電解質を含んだスポーツドリンクは水分補給と栄養補給に役立ちますが、飲み過ぎによる糖分と塩分のとり過ぎには注意しましょう。1日以上水分が全く取れなかったり、尿が濃い黄色になったり出なくなったりする場合は要注意です。早めに医療機関を受診しましょう。
カフェインの摂りすぎに注意
コーヒーや紅茶に含まれるカフェインは、胎盤を通過しておなかの赤ちゃんに移行するので注意が必要です。とはいえ、過剰摂取をしなければ、ダイレクトに影響する可能性は少ないです。1日に1〜2杯くらいを気分転換に飲む程度であれば心配はないでしょう。
それでも気になる場合は、カフェインの入っていない飲み物を選んでみてください。お茶の中でも麦茶にはカフェインが入っていませんし、最近ではカフェインレスのコーヒーも充実しています。お気に入りの飲み物を見つけてリラックスタイムの「ほっと一息」に活用しましょう。
急激な体重の減少
妊娠9週はつわりがピークを迎える時期。食べ物の匂いや味が受け付けられず、十分な食事が摂れなくなり、体重が一時的に減少することがあります。また、頻繁に嘔吐していると水分も失われやすく、脱水気味になって体重が落ちることも。
妊娠9週頃は胎児がまだ小さく、必要な栄養は母体の蓄えから賄われるため、体重減少が直接悪影響を与えることは少ないです。ただし、長期間にわたって極端に栄養が不足すると、母体の健康に影響が出る可能性があるので注意が必要です。
妊娠9週のチェックリスト
仕事との両立について
妊娠9週頃になると、つわりや疲れやすさが仕事に影響を及ぼすことがあります。デスクワークでも集中力が落ちたり、立ち仕事だと体力的に辛く感じたりすることがあるかもしれません。うまく仕事を続けられるよう、勤務先に相談してみることをおすすめします。
通勤ラッシュを避けたり、リモートワークが可能な場合は活用したりして、からだへの負担を減らしましょう。業務量を調整し、無理のないペースで進めることも大切です。
また、医師から指示があれば、「母性健康管理指導事項連絡カード」を職場に提出して、対応を求めることができます。「完璧に仕事をこなさなきゃ」と気負わずに、自分のペースを優先して、何かあったときに備えた仕事の仕方を模索していきましょう。
赤ちゃんの名前を考え始める
性別はまだわからない時期ですが、赤ちゃんの名前を考えることは親になる実感を深め、楽しみを増やす良い機会になるでしょう。この時期は、赤ちゃんの名付け辞典やウェブサイトなどで情報収集を始めてみましょう。毎年発表される「名前ランキング」をチェックするとトレンドや定番が分かりますよ。パートナーともアイデアを出し合って、イメージをふくらませてみてくださいね。
マタニティ用のブラジャーを選ぶ
ホルモンの影響で、おっぱいが大きくなったり、張って敏感になったりすることがあります。普段より1カップ程度大きく感じる人もいるでしょう。また、乳腺が発達し始め、触ると少し痛かったり、締めつけに敏感になったりすることも。この時期は、快適さとサポートを重視したブラジャーを選びましょう。妊娠初期から使える設計のマタニティブラは伸縮性とサポート力があり、授乳ブラ兼用のものなら産後も使えて経済的です。妊娠中はバストサイズがさらに変わるので、数カ月ごとにフィット感を見直すのがおすすめです。
妊婦健診以外での受診について確認
妊婦健診以外でも、心配なことがあれば病院を受診することができます。診療時間外になることもあるので、緊急時の電話番号などもあらかじめ確認を。また、何かあったときにすぐに連絡できるよう、家族や身近な人の連絡先をスマホに登録しておくことをお忘れなく。病院に向かうためのタクシー配車アプリを入れておくのも良いでしょう。
妊娠9週:パパにできることは?
日常的な家事を引き受けてママの負担を減らすことはもちろん、精神的な支えになってあげることも大切です。特に妊娠9週は、つわりやホルモンの影響で感情が揺れやすい時期。「今日はどんな感じだった?」と気軽に話を聞いて、共感したり感謝の気持ちを伝えてあげてくださいね。赤ちゃんの名前を考えたり、エコー写真を見ながら「どんな子かな」と話したりすると、より一層絆が深まることでしょう。
妊娠9週目: お医者さんに聞くことは?
流産リスクについて
妊娠全体での流産リスクは15%程度と言われていますが、その大部分は妊娠12週までの初期に起こります。妊娠9週は、流産リスクがまだ高い時期なので、具体的な注意点を聞いておくと安心です。
初期の流産は多くの場合、赤ちゃん側に原因があり、ママの行動が原因となることはほぼありません。ただ、喫煙や飲酒、過度なストレスや疲労など、不安を高める要因はできるだけ避けて過ごしたいですね。
妊娠悪阻について
つわりで食事や水分がほとんど摂れていない、一日に5回以上嘔吐する、尿が極端に少ない、妊娠前に比べて体重が急激に減っているなどの症状がある場合は「妊娠悪阻」(にんしんおそ)の状態になっている危険性があります。妊娠悪阻とはつわりが重症化した状態で、吐き気や嘔吐がひどく日常生活に支障をきたす状態のこと。点滴で栄養補給をしたり、吐き気止めを飲むことで症状が改善することが多いですが、入院が必要になる場合もあります。つわりの症状がひどく、心配な人は医師に相談しましょう。
運動について
医師から「安静指示」が出ていない限り、適度な運動は血流を良くし、ストレス解消にも役立ちます。ただし、つわりや疲れやすさがある時期のため、無理のない範囲で行いましょう。
妊娠9週:よくある質問
妊娠9週ですが、ヘアカラーやパーマをしても良いですか?
妊娠9週にヘアカラーやパーマをするのは基本的に問題ないとされています。ただし、全く影響しないというデータもありません。カラー剤やマニキュアの匂いで気分が悪くなったり、長時間同じ姿勢で座りっぱなしになることでからだに負担がかかることもあるので、心配な場合は医師と相談し、体調を十分考慮した上で美容院へ行くことをおすすめします。また、担当の美容師さんには妊娠中であることを伝えておくと良いでしょう。
妊娠9週ですが、終わりの見えないつわりに疲れ切っています。つわりの症状はいつまで続くのでしょうか?
妊娠9週は、つわりが最も強く感じられるピーク時期にあたります。今が一番辛い時かもしれませんが、多くの場合は妊娠12週頃からホルモンバランスが安定し、つわりが自然に軽減していきます。全体の約70~80%の人がこの時期に楽になるとされています。つわりの終わりは人それぞれですが、9週の今がピークであるなら、あと1カ月ほどでゴールが見える可能性が高いです。毎日が辛くても、1週間単位で「少し楽になったかな?」と振り返ってみると良いでしょう。
妊娠9週です。妊婦健診を受けないとどのようなリスクがあるのでしょうか?
妊婦健診では、超音波検査などで胎児の成長や心拍を確認します。妊娠中は血圧の上昇や貧血、妊娠糖尿病などのリスクが高まるため、健診で定期的にチェックしないと、症状が進行して母子ともに危険な状態になる恐れも。妊婦健診では、妊娠・出産に必要なアドバイスやサポートが受けられるので、体調の良し悪しに関わらず、必ず受診してくださいね。
「妊娠9週の壁」という言葉を知りました。乗り越えるにはどうしたら良いでしょうか?
「妊娠9週の壁」とは医学用語ではありませんが、妊娠判明時から9週頃までが最も流産率が高いため、そう呼ばれるようになった経緯があるようです。流産の兆候としては、少量の出血が長く続く、大量の出血がある、強い腹痛がある、つわりの症状が突然消える、といった症状が挙げられます。
ただ、妊娠初期の流産は、赤ちゃんの染色体異常によるものがほとんどで、妊婦さんの行動が原因ではなく、流産を防ぐ方法もありません。ですから、もし妊娠9週を乗り越えることができなくても、自分を責めないようにしてくださいね。