妊娠37週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子


井畑穣 先生
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
母体保護法指定医
日本婦人科腫瘍学会認定 婦人科腫瘍専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠37週に知っておきたい大切なポイントは?
妊娠37週から正産期となります。いつお産が始まってもおかしくない時期なので、準備するものや気持ちを整えていきましょう。陣痛が起こったら間隔の計測を、破水が起こったときにはすぐに病院へ連絡をするようにします。妊娠37週頃の赤ちゃん&妊婦さんの様子や気をつけておきたいアドバイスをお届けします。
妊娠37週は妊娠何カ月?
妊娠後期で妊娠36週以降にあたる妊娠10カ月の第2週です。正産期(妊娠37~41週)になり、いよいよ赤ちゃんと会える日が近づいてきました。
妊娠37週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠37週:赤ちゃんの大きさは?
妊娠37週の赤ちゃんの大きさは2,500gを超えるようになりました。正出生体重児と分類される目安は、2,500~4,000g未満。妊娠7週頃は豆粒サイズだった赤ちゃんが、こんなにも立派に育ってきました。
妊娠37週:赤ちゃんの様子は?
骨盤の中に頭が収まるように、赤ちゃんは少しずつ下におりていきます。足を折りたたみ、からだを丸めて、産道や子宮口を通りやすい姿勢を作っていきます。羊水の量も少なくなってきて、いままでよりも胎動を感じにくくなっているかもしれません。
妊娠37週:赤ちゃんの発達は?
おなかの外で生活できるようにからだの器官が出来上がってきた赤ちゃん。いまは、生まれた後に感染症から身を守るためのIgG(免疫グロブリン)という免疫物質を母体から受け取っています。母体から由来するIgGは生まれた後に少しずつ減少し、ほとんどが半年ほどでなくなります。
妊娠37週:妊婦さんのからだは?
妊娠37週:妊婦さんのからだの様子は?
赤ちゃんが少しずつ骨盤の中に下りていくにつれ、胸のあたりのつかえたような圧迫感が落ち着いてきます。動悸があった妊婦さんは治まっていることも多いようです。下腹部に重みを感じるようになり、恥骨や骨盤の痛みを強く感じるようになっているかもしれません。
妊娠37週:妊婦さんのおなかの大きさは?
赤ちゃんが下りてくるとともに子宮底も下がり、まんまるのおなかのおへその位置にも変化が見られます。恥骨のすぐ上から子宮底までの子宮底長は35cm前後です。
妊娠37週:妊婦さんが気をつけること・することは?
破水と尿漏れの違い
出産のはじまりのサインとなる破水とは、赤ちゃんを包む羊水の膜が破れて、羊水が出てきている状態です。感染防止のため、破水があったらすぐに病院へ向かう必要がありますが、破水を経験したことがない妊婦さんは尿漏れと間違えているのではないかと不安を覚えることも。破水の量は多いことも少ないこともあるので、量で考えるのではなく、においや出方で判断します。
・破水…生臭いようなにおいで、自力で止めることができない
・尿漏れ…アンモニア臭があり、自力で止めることができる
破水があったら、病院へ移動することになりますが、この後も破水が続くことが考えられるため、下着を取り換えたらナプキンを付けておきます。量が多いときは厚手のバスタオルを腰に巻き、車での移動の際にはレジャーシートや吸水シートを敷いて座ると安心です。
少しでもゆったり眠れるように
臨月に入り、よりおなかの重みを感じて眠りづらくなっているかもしれません。からだの左側を下にし、上になる右足を軽く曲げて、ややうつぶせ気味になる「シムスの体位」といわれる体勢や、上半身の下にクッションを敷いて20度前後からだが起きるようにし、膝が軽く曲がるように足元にもクッションを置く「セミファーラー位」など、少しでもラクに感じられる体勢を見つけて休むようにしましょう。
また、いつ陣痛がくるかと不安に襲われることもあると思いますが、気持ちが高ぶってしまうと眠りの妨げになってしまうので、リラックスを心がけるようにしましょう。寝る1~2時間前にぬるめのお風呂に浸かったり、軽いストレッチを行なったり。鼻から吸ってゆっくり深く息を吐くというソフロロジー式の呼吸法を試してみるものいいかもしれません。
乳輪、乳頭部のマッサージ
赤ちゃんに必要な栄養素や免疫物質が含まれる母乳。特に出産後3~6日程度出る初乳には、IgAなどの免疫物質が多く含まれています。また、母乳を与えることによって母体を早く回復させたり、体重を減らしたりという効果も。
生まれたての赤ちゃんがおっぱいを飲みやすくなるように、乳首を柔らかく伸びやすくし、乳管を開通させていくのが、乳輪と乳頭部のマッサージです。乳輪や乳頭部のマッサージを行うと、子宮の収縮を促すため、妊娠37週頃から行うようにします。
マッサージする側の手で乳房の下を支え、オイルやクリームなどをつけた反対側の手の親指・人差し指・中指で乳輪と乳頭部をつまんでやさしく圧迫していきます。乳首を中心に指の位置を回転させながらすべての角度のマッサージを行います。乳管が貫通すると乳首に乳垢がたまるようになるので、コットンやガーゼにオイルなどを含ませてやさしくふき取るようにして取り除きます。
おなかが張りやすい傾向がある場合は注意が必要ですので、状態を医師に確認してから乳輪や乳頭部のマッサージを行うようにしましょう。
急性妊娠脂肪肝とは
妊娠37週頃に発症することがある「急性妊娠脂肪肝」。非常に稀な重篤の肝臓疾患で、肝臓に過剰な脂肪が急激に蓄積してしまい、嘔吐や黄疸などの症状がみられることがあります。母児状態を判断し、緊急帝王切開にて胎児を摘出し、治療を行います。
妊娠37週のチェックリスト
赤ちゃんにとって快適な居場所になっている?
誕生後、赤ちゃんが過ごす場所について確認をしておきます。赤ちゃんのいる部屋の快適な室温は夏25~28℃・冬20~25℃で、湿度は50%前後が目安。ベビーベッドや布団はエアコンの風が直接当たらない場所を定位置に考えましょう。
また、安全面は入念に確認を。落下や転倒するものは近くにないか、ベッドの柵はしっかり設置できているかなどは重点的に確認しておきましょう。窒息を防ぐためにも赤ちゃんの顔の近くにはぬいぐるみや布などを置かないようにします。
大人の寝具は深く沈んだり、覆いかぶさったりしてしまうことがあるため、生後しばらくは一緒の布団で添い寝をすることは避けるようにしましょう。
臨月になったら持ち歩くもの
臨月になったら、急遽外出先で陣痛や破水がはじまって病院へ行くことになっても困らないように、必要なものを持ち歩くようにします。
<持ち歩くもの>
母子健康手帳/マイナンバーカード(保険証)/診察券/財布/スマホ
(破水したとき用)夜用ナプキン/ビニールシート
臨月になったら、もしものことを考えて、出かける場所は産院にすぐに行ける範囲で。妊婦さんひとりでの遠出は基本的に避けるようにします。
陣痛がきても一時帰宅になることある
陣痛がきたかな?と思って病院へ移動しても、前駆陣痛だったり、陣痛があまり進まなかったりすると、自宅に一度戻って様子をみることになる場合があります。それが一時帰宅です。
陣痛のような痛みがあると慌てがちですが、まずは陣痛アプリなどを用いて痛みの間隔を計測していきましょう。
また、陣痛の間隔が狭まって病院に行っても、その後、陣痛が落ち着いてしまうこともあります。子宮口の開きや分娩監視装置で状態を確認して、本陣痛までまだ時間がかかりそうと考えられるときは一時帰宅となります。
一時帰宅してから、すぐに陣痛がはじまることもあれば、そこから1日以上かかることもあります。からだの状態を確認しながら、いつ再び陣痛が起こっても良いように備えておきましょう。
出産予定日に生まれる割合はそれほど多くない!
出産予定日は40週0日ですが、実際にこの日に生まれる赤ちゃんはそれほど多いわけではなりません。出産日は、正産期にあたる妊娠37~41週に分散しているので、妊娠37週に入った時点で、「まだまだあるな」と思っていると、いきなり陣痛がやってきて驚いてしまうことも。いつお産が始まっても大丈夫なように準備をしておきましょう。
妊娠37週:パパにできることは?
陣痛が起こっても、すぐに赤ちゃんが生まれるわけではありません。10分間隔の本陣痛となってから子宮口が全開になるまで、初産婦で約10~12時間、経産婦では約5~6時間かかるといわれており、子宮口が全開になってから赤ちゃんが生まれるまでも約1~3時間かかります。状態によっては、もっと長くかかることもあります。
子宮口が全開になるまで、激しくなっていく辛い陣痛を妊婦さんは耐えるしかありません。汗を拭く、テニスボールなどで腰まわりを押して痛みを和らげる、ラクな姿勢を作れるように協力する、うちわや扇子で扇ぐなど、状況にあわせてサポートを。
ただ、陣痛で取り乱す様子を見られたくないという妊婦さんもいるので、どんなサポートが良いのかを事前にしっかりと話し合っておくといいでしょう。
妊娠37週: お医者さんに聞くことは?
会陰切開を避けることはできますか?
会陰切開について話を聞いたり、調べたりすると不安を覚えることがあるかもしれません。切開したくないと考えているのであれば、事前に医師に会陰切開をしないですむか確認をしてみましょう。
会陰が伸びることで赤ちゃんが通れるようになるので、十分な伸びがないときには切開をしないと、会陰が裂けてしまう可能性もあります。軽度の裂傷であれば自然治癒が可能なこともありますが、肛門のほうまで裂けてしまうほど重度の傷を負うことも。赤ちゃんの状態によっては急いで分娩しなくてはならないこともあり、その場合は会陰切開が必要となります。
体のふらつきを感じる
赤ちゃんが少しずつ下りてくることでからだの重心のバランスが変わって、ふらつくようなことがあるかもしれません。立ち方や歩き方を変えることで対応できるようであれば問題ないと思いますが、貧血の影響による場合もありえます。意識を失ってしまうと危険なので、もしふらつきを感じるようであれば医師に相談をしておきましょう。
生まれるのはいつ頃になりそうか
妊娠37週になると、妊婦健診に内診や膣鏡診、NST(ノンストレステスト)を行って、子宮口や子宮頸管、赤ちゃんの頭の位置などを確認します。現在、どこまで出産が近づいてきているかを確認してみましょう。予定通りに進むことになるかはわかりませんが、目安を聞いておくと少し安心できますね。
妊娠37週:よくある質問
妊娠37週で出産するのは早産ですか?
妊娠37~41週の出産が正期産、妊娠22週~妊娠36週の出産が早産となりますので、妊娠37週での出産は早産ではありません。しかし赤ちゃんの成熟度を考えると、一般的には少しでも出産予定日に近い時期での出産の方がいいと考えられています。
妊娠37週の胎児の体重の平均は?
妊娠37週の胎児の体重の平均は、2,650g前後です。妊娠37週の胎児の体重は個体差が大きく、目安の体重は2,050g~3,250g。1,000g以上も幅があります。
また、推定体重には±10%の誤差が生じると考えられており、生まれたら体重が全然違っていた!ということもあります。
妊娠37週で気持ち悪さを感じるのはなぜ?
妊娠37週頃の気持ち悪さの原因のひとつに、前駆陣痛が考えられます。前駆陣痛が起こることで胃や腸が圧迫され、気持ち悪さを引き起こし、嘔吐してしまうこともあります。しばらく休んで痛みが引いて、気持ち悪さも落ち着くようであれば、前駆陣痛と考えられます。また、大きくなった子宮が胃や腸を圧迫して消化不良を起こしていることや、ホルモンの影響で消化器官が弱っていることなども理由に考えられます。あまりにも気持ち悪さが伴う場合は、他のリスクも考えられるため、病院へ連絡しましょう。
妊娠37週で出産の前触れとなる症状は?
出産の前触れとなるサインはいくつかあります。「おしるし」と呼ばれる、少量の出血がまじった粘り気のあるおりものがあると、その後に前駆陣痛や陣痛が起こると考えられます。おしるしがあってからすぐ陣痛がくることもあれば、2~3日経ってからということもあります。おしるしがないこともあります。
陣痛に似た「前駆陣痛」もあります。不規則な痛みがあり、しばらくすると治まります。子宮の収縮によって起こるもので、数時間で陣痛がくることもあれば、1~4週間経っても本陣痛がこないこともあります。
いきなり「破水」が起こることもあります。卵膜が破れて羊水が出ている状態ですが、この場合は赤ちゃんへの感染を防止するために、すぐに病院へ連絡をします。シャワーやお風呂は入ってはいけません。
定期的に痛みを感じる「陣痛」が起きたら、時間を計測します。10分間隔で痛みが起こるようになったら病院へ連絡を。