妊娠31週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子

河野照子 先生
医学博士
日本産科婦人科学会専門医
日本周産期・新生児医学会専門医
日本超音波医学会専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠31週に知っておきたい大切なポイントは?
妊娠8カ月の最終週となる妊娠31週。神経や筋力が発達してきた赤ちゃんのかわいい仕草が見られるようになります。近づく出産に向けて母体の準備も進み、足元が見えなくなるほどおなかも大きくなっています。妊娠31週頃の赤ちゃん&妊婦さんの様子や気をつけておきたいアドバイスをお届けします。
妊娠31週は妊娠何カ月?
妊娠後期で妊娠28~31週にあたる妊娠8カ月目の第4週です。妊娠8カ月も最終週となり、来週からは妊娠9カ月になります。
妊娠31週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠31週:赤ちゃんの大きさは?
妊娠31週頃の赤ちゃんの大きさは身長40cm前後、体重は1,500g~1,700g前後になりました。1.5Lのペットボトルくらいの重さがおなかのなかに存在しているかと思うと、その成長を実感できますね。
妊娠31週:赤ちゃんの様子は?
おなかのなかの赤ちゃんはだんだん大きくなり、子宮の中で丸まった姿をとるようになっていきます。脳の発達が進み、頭が重くなり、だんだんと子宮の下方に頭がある「頭位」の姿勢に落ち着いてきます。この段階で逆子の状態である割合は15%ほどで、正期産の時期になると全体の3%ほどになります。まだ移動する可能性はありますが、もう少し大きくなると、子宮の中で今までのように身動きが取れなくなり、位置が固定されます。
妊娠31週:赤ちゃんの発達は?
神経系の機能のほとんどが発達してきました。外からの音や光に対して反応するなど、視覚や聴覚はさらに機能が高まっています。骨がかたくなり、筋肉も発達して、細かな動きができるようになっていきます。赤ちゃんの様子がよくわかる4D超音波検査では、指をくわえたりするような姿を見られるかもしれません。
妊娠31週:妊婦さんのからだは?
妊娠31週:妊婦さんのからだの様子は?
おなかや胸がさらに大きくなっていきます。からだの前側が重くなっていくために、猫背になったり、それをカバーするために反り腰になったりとバランスが悪くなってしまいます。そのため血行が悪くなりマイナートラブルが起きやすくなっています。
妊娠31週:妊婦さんのおなかの大きさは?
子宮底長は26cm前後となり、みぞおちの下あたりからせり出すようにおなかが大きくなっていきます。足元がほとんど見えなくなり、転倒しやすい状態となっているので、ゆったりとした動作を心がけていきましょう。
妊娠31週:妊婦さんが気をつけること・することは?
胃酸の逆流を防ぐには
妊娠31週頃は、子宮が大きくなるにつれて胃も圧迫されます。また、プロゲステロンというホルモンの影響で胃腸の働きが低下したり、食道の括約筋が緩んでしまいます。そのため胃酸が逆流し、胸やけや胃のむかつき、胸や胃の痛み、食欲不振などの症状が出てしまうことも。
母体や胎児のためにも、ある程度の食事量は必要です。脂っこいものを避け消化の良い食事をする、1回あたりの量を減らして回数を増やす、食後にすぐ横にならないといった対策をしてみて。それでも改善しないようであれば、医師に相談を。
寝苦しいときはシムスの位
大きなおなかは仰向けに寝るとからだを圧迫するため苦しく感じることが多くなります。動脈などを圧迫して血圧低下を招く、仰臥位(ぎょうがい)低血圧症候群のリスクも考えられるので注意をしましょう。からだの左側を下にした横向きになり、下側になる左足を伸ばし、上側になる右足を曲げる「シムスの体位」をとると少しラクになります。抱き枕もしくはクッションなどを足に挟むとバランスがとりやすく、圧力を分散させることができます。自分がラクに感じられる姿勢を見つけられるといいですね。
反りがちになる姿勢を正す
妊娠が進むにつれて体型が変化し、重心のバランスが変わってきます。大きなおなかを支えようとつい姿勢が反りがちになり、肩や背中が凝ったり、腰を痛めたりしてしまいます。立っているときは、おなかに力は入れず、あごを引き、肩の力は抜いて、骨盤を立て、おしりを引き締めるようにするとからだへの負担が減ります。歩いたり、座ったりすると姿勢が元に戻ってしまうので、気づいたら姿勢を正すように意識していきましょう。スマホをみているときは猫背になってしまいがちなので、特に注意を。
骨盤ベルトや腹帯で骨盤の痛みを軽減
妊娠後期になると、さまざまな要因で骨盤が痛むことがありますが、骨盤ベルトや腹帯を利用してその痛みを軽減するというのも一つの方法。出産に向けて緩んだ骨盤周りの靭帯や筋肉を骨盤ベルトや腹帯でサポートし支えてあげます。姿勢を整える働きもあるので、骨盤痛だけでなく、腰痛などの対策として取り入れても。
ストレスを感じるときは気分を切り替えて
ホルモンバランスの変化からストレスを感じることが増えてくるかもしれません。おなかが大きくなっていくことで今までできた動作がしにくくなることも重なり、イライラしたり、不安を感じたり。そんなときはあまり落ち込んだりせず、気分を切り替えるようにしていきましょう。おしゃべりをする、推し活を楽しむなど自分の好きなことをしていると、心もリラックスできるはず。またからだを動かすことが気分転換につながることもあるので、なにかモヤモヤしたときは軽いストレッチを行うこともおすすめです。
妊娠31週のチェックリスト
里帰りしてもなるべく動くように心がけて
臨月に入ってからの長距離の移動にはリスクが伴うため、里帰り出産をする妊婦さんは、妊娠30~34週までに帰省をするようにして。転院先の産院によって「いつまでに転院」という時期があるので、事前に確認をしておきましょう。移動はなるべく負担の少ない方法で、無理をしないよう休憩を取りながら行います。
実家に帰省することでつい甘えてしまいがちですが、あまり動かなくなってしまってはからだにもよくない上、親の負担も大きくなってしまいます。体調が安定しているようなら、家事を分担し、またお礼についても考えておきましょう。帰ったタイミングで渡しても。
ベビースペースの見直し
産後に赤ちゃんが生活するベビースペースは整ってきたでしょうか。退院後自宅に戻ってくると、すぐに赤ちゃんにつきっきりの生活となってしまうため、まとまった時間を作ることが難しくなります。赤ちゃんはどこに寝かせ、授乳はどこで行うかをイメージして、いまのうちに、赤ちゃんのお世話をするスペースを作っていきます。エアコンの風があたる位置、ライトや直射日光があたる場所、付近に落下する可能性のものはないかなども考慮しておきましょう。
こむら返りを予防
妊娠後期の血行不良や、筋肉の疲労、ミネラル不足などから、寝ているときなどに起こしやすくなる、こむら返り。痛くて辛いので、起こらないように予防をしていきたいもの。
足のむくみも原因となるため医療用弾性ソックスを着用したり、疲れた日は足を高くあげたりするといいでしょう。水分をしっかり摂り、足の筋肉の動きを調整するマグネシウムやカルシウム、カリウムなどミネラルを含む食材を意識。マグネシウムを含む納豆やアーモンド、カルシウムを含む乳製品や小松菜、小魚類、カリウムを含むアボカドやバナナなどを食事やおやつに取り入れるようにしましょう。足が冷えないように湯船に浸かり、靴下を着用するのもおすすめです。
軽い運動はメリットがいっぱい
おなかが大きくなってくると運動することを敬遠しがち。しかしウォーキングやマタニティヨガなどの運動に日々取り組んでいくことは、さまざまなマイナートラブルを解消したり、リフレッシュしたりすることに繋がります。また出産に向けた体力づくりにもなります。もちろん無理は禁物ですが、体調が良いようであれば、ゆったりとからだを動かし、健康的な時間を過ごしていきましょう。
妊娠線の予防には保湿と体重管理
おなかや胸、おしりなどが急激に大きくなる妊娠8カ月頃に現れることが多い妊娠線。一度できてしまうと消えにくくなってしまうので、こまめに予防をしておくことが大切です。皮膚の柔軟性を高め、摩擦を防ぐために、マタニティ専用のクリームなどを用いて保湿ケアを行います。おなかをマッサージするときは、圧迫したり、強い力を加えたりするとおなかへの負担が大きくなってしまうため、やさしく行うようにしましょう。妊娠線は二の腕や太もも、脇腹などにできることもあるので、全身をしっかりケアしていきます。
また、急激な体重の増加も原因になると考えられるので、体重をしっかり管理することもお忘れなく。
妊娠31週:パパにできることは?
妊婦さんが強いストレスを感じてしまうと、それが引き金となっておなかが張ったり、体調不良を招いたりしてしまうことがあります。妊娠後期になると、からだが思うように動かせないことやマイナートラブル、体型の大きな変化、間近に控えた出産への不安、赤ちゃんを育てることへのプレッシャーなどさまざまな要因から不安を抱えてしまいがち。そこにホルモンバランスの変化もあって、感情のコントロールがきかなくなることがあります。そんなときは近くにいるパパが不安な気持ちに寄り添ってあげることが大事。話をきいてもらうだけ、もしくはそばにいてくれるだけでも落ち着けることがあります。おなかが大きくなって外出しづらくなり、一人で過ごす時間も増えている頃なので、妊婦さんの心の変化を見逃さないようにしてくださいね。
妊娠31週: お医者さんに聞くことは?
張り止め薬の副作用が辛い
早産のリスクがある妊婦さんに、子宮の収縮を抑えおなかの張りを和らげる張り止め薬が処方されることがあります。短期の使用が推奨されているので、医師の指導のもとで服用します。また、薬によっては、動悸や手の震えなどの副作用があることも。副作用が辛かったり、吐き気がある場合などは医師に相談をしましょう。
現在の体重の増え方は適正か
体重がぐっと増加していく時期なので、妊婦健診の際には、現在の体重の増え方が問題ないかを確認をしておきましょう。この時期のプラス体重だけで確認をするのではなく、1、2週間ごとなど細かく増え方を確認するといいでしょう。
頭痛が辛い
妊娠後期になると、女性ホルモンの増加や、運動不足による血行不良、大きくなった胸の重みによる肩こりなどから、頭痛を感じることがあります。ストレッチをしたり、ウォーキングをしたりすると緩和されることもありますが、ひどい頭痛は吐き気などを催すこともあるので、辛い場合は医師に相談を。妊娠中でも服用できる薬もあります。また、妊娠高血圧症候群でも頭痛を感じることがあるため、強い頭痛を感じるようであれば早めに相談してください。
妊娠31週:よくある質問
妊娠31週の胎児の体重は2,000gくらいですか?
妊娠31週頃の胎児は1,600g前後で、2,000gは少し大きめかもしれません。胎児の推定体重は超音波検査で測る赤ちゃんのからだの大きさから計測するため誤差がありますが、不安であれば医師に相談を。赤ちゃんが大きくなる原因に妊婦さんの糖尿病があるので、適切な食事内容であるかも確認しましょう。
妊娠31週のマイナートラブルは?
妊娠31週のマイナートラブルには、動悸・息切れ、貧血、骨盤痛・恥骨痛、便秘、むくみ、静脈瘤、こむら返り、胸やけ・胃もたれ、腰痛・背中痛・頭痛などがあります。大きくなる子宮の圧迫、ホルモンバランスの変化、血液量の増加などさまざまな要因が考えられます。
赤ちゃんが下がってきたらどんな症状が出るの?
出産に向けて赤ちゃんが下に降りてくると、母体の圧迫される箇所が変わるため、今まで感じていた症状に変化があります。胃や胸の圧迫感が減り、胃もたれや食欲不振、浅い呼吸などが改善される傾向がありますが、今度は膀胱や骨盤などの圧迫が強くなるため、尿漏れや便秘、恥骨痛などを起こしやすくなります。
妊娠31週で飛行機に乗れますか?
妊婦さんが飛行機にいつまで乗っていいか、いつから乗ってはいけないかという規則自体はありません。ただし、出産予定日までの日数などによって、医師の診断書の提出が必要であったり、医師の同伴が必要であったりするので、手続きについては各航空会社に確認をする必要があります。
飛行機での移動は長時間座ることになるため、むくみや血栓予防のためにストレッチや水分補給を忘れないようにしましょう。座席を指定する際は、移動しやすい通路側、リクライニングできる非常口付近以外の席を選ぶようにすると安心です。