妊娠30週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子

河野照子 先生
医学博士
日本産科婦人科学会専門医
日本周産期・新生児医学会専門医
日本超音波医学会専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠30週に知っておきたい大切なポイントは?
妊娠30週頃になり、赤ちゃんは1,500g前後になってきました。おなかが大きくなると増えてしまうマイナートラブルや合併症のリスクを減らすためにも、食事の内容には配慮をしていきます。妊娠30週頃の赤ちゃん&妊婦さんの様子や気をつけておきたいアドバイスをお届けします。
妊娠30週は妊娠何カ月?
妊娠後期で妊娠28~31週にあたる妊娠8カ月の第3週です。8カ月の後半となり、分娩予定日までは残り2カ月半。赤ちゃんが生まれる準備が整う正産期(妊娠37~41週)となるまでは無理をせず過ごしていきましょう。
妊娠30週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠30週:赤ちゃんの大きさは?
妊娠30週頃の赤ちゃんは、身長はだいたい35cm~40cm、体重は1,300g~1,600gほど。1,000gを超える赤ちゃんがほとんどになってきます。
妊娠30週:赤ちゃんの様子は?
血管が透けて見えていたため赤く見えていたからだに皮下脂肪がどんどん増え、白っぽい姿になってきました。手足の指の爪もでき上がってきています。それぞれのパーツが大きくなってきているので、超音波検査でもその形がはっきりと見えるようになっているのではないでしょうか。子宮の中ももう少しでいっぱいになりそうですね。
妊娠30週:赤ちゃんの発達は?
妊娠30週頃になると、赤血球の細胞は大人と同じように骨髄で作られるようになります。さまざまな内臓の機能も完成に近づき、体温の調節も備わりつつあります。体外に出ても自力で活動していけるように、準備を進めているのです。
妊娠30週:妊婦さんのからだは?
妊娠30週:妊婦さんのからだの様子は?
おなかが大きくなっていることで下半身の血管やリンパが圧迫され、むくみや貧血などのマイナートラブルが起きやすい状態になっています。これからおなかはますます大きくなっていくので、食事の内容を見直し、適度な水分の摂取を心がけ、からだを心地よく動かし、無理のない範囲で予防をしていくように努めていきましょう。赤ちゃんのいる位置が徐々に定位置になるようになっていきます。胎動を感じる場所に変化を感じるようになるかもしれません。
妊娠30週:妊婦さんのおなかの大きさは?
おへそとみぞおちの間あたりまで子宮底がせりあがり、おなかはさらに丸みを帯びてきます。この大きなおなかのなかの子宮を満たす羊水の量は、妊娠30週あたりから35週に向けてピークを迎えていきます。800ml近くまで増えた羊水は、分娩予定日に向けて徐々に減っていき、最終的には500mlほどになります。
妊娠30週:妊婦さんが気をつけること・することは?
冷え対策でマイナートラブルの予防を
おなかが大きくなっていく妊娠後期は、子宮の圧迫で血行が悪くなったり、ホルモンバランスの変化で自律神経が乱れたり、貧血が起こったりすることで、冷えを感じることがあるかもしれません。からだが冷えてしまうと、血の巡りに悪循環が生じ、腰痛や頭痛、肩こり、むくみ、こむら返り、便秘、下痢といったマイナートラブルを起こしやすくなるだけでなく、おなかの張りを引き起こしてしまうことも。
からだを温めておくと出産や産後の授乳などにも良い影響が考えられますので、常にからだが温かい状態でいられるよう、冷えの対策をしていきます。
おなか周りの冷え対策には腹巻や腹帯を使用する、足元の冷えには靴下やレッグウォーマーを履く、姿勢を正して血行を良くするために骨盤ベルトを巻く、からだを温める作用のある食材を摂るなど、できることを取り入れてみましょう。
妊娠高血圧症対策に減塩を
妊娠30週頃に気をつけたい合併症のひとつが、妊娠高血圧症候群。対策としてまず取り組みたいのは「減塩」です。日本人女性は、推奨される1日の塩分量より多く摂取している傾向があるので、普段より抑える必要があります。例えば漬物やスナック菓子、インスタント食品などの塩分が多い加工食品を控え、調理する際も調味料の量を意識します。調理をするときは天然のだしやハーブ、薬味などを活用すると味にアクセントがついて物足りなさを解消できますよ。また、高血圧の予防に果物や生野菜、いも類などのカリウムを多く含む食材を摂取していきましょう。水溶性なので野菜を汁物でいただくのもおすすめです。
毎日のストレッチを習慣化しよう
おなかが大きくなり、運動量が減ってじっとしていることが多くなると、からだが凝り固まりがちです。そんなときはストレッチがおすすめ。肩甲骨をまわしたり、足首を前後左右に動かしたりなど、座りながらできるストレッチで、からだをほぐしていきましょう。気付いたときに行うのでもいいですし、朝起きたとき・寝る前・食事の前…とタイミングを決めて習慣化しておくのも一つの方法です。血行を良くすることで、貧血やむくみの予防にもつながっていくので、毎日行うといいでしょう。
妊娠30週のチェックリスト
入院セットの準備をしておこう
妊娠後期に入ったら「入院セット」を準備しましょう。分娩予定日まではまだ2カ月半ほどありますが、急遽入院になることがないとも言い切れないのがお産。例えば切迫早産と診断されて緊急入院する可能性もあります。入院するときに必要なものをまとめておけばいつでも持ち出すことができ、パートナーや家族もわかりやすくなります。
<入院中・出産時に使うもの><退院時に使うもの>と、大きく2つのタイミングで準備をしておくと、運びやすくなります。また産院で用意されているもの、レンタルしてもらえるものもあるので事前に調べておくと荷物を減らすことができます。
◆基本的に持ち歩いておきたいもの
母子手帳/マイナンバーカード(健康保険証)/診察券
◆入院中・出産時に使うもの
入院に関する書類/筆記用具/印鑑
マタニティパジャマ(2組)/授乳用ブラジャー(3枚)/産褥ショーツ(3枚)/産褥パッド/靴下/腹帯・骨盤ベルト/カーディガンなどの羽織物/バスタオル・タオル/スリッパ/洗面用具/入浴セット/スキンケア一式/スマートフォンの充電器
陣痛の痛みやいきみ逃し用のボール/ストロー付きキャップ/ガーゼハンカチ/クッション・抱き枕 など
◆退院時に使うもの
ママの洋服一式/赤ちゃんの退院服/おくるみ/おむつ など
体重管理のために食生活の再確認を
おなかの赤ちゃんの成長や血液量の増加、出産や授乳に向けて脂肪も蓄えられていくため、これから体重はさらに増えていくようになります。この時期に順調に体重が増えていくことには問題はありませんが、急激に増えてしまっていないかはチェックするようにしましょう。今後の妊娠生活に向けて、改めて食生活を振り返っておきます。
<カロリーを抑える食事の見直しポイント>
・調理法を見直す
蒸し料理にすると油を使わないので炒め物や揚げ物よりもカロリーを抑えることができ、また栄養素が失われにくいというメリットもあります。
炒め物ではオイルスプレーを活用したり、揚げ物はノンフライ調理にしたりすると油の量を減らすことができます。
・食材を見直す
肉類を選ぶときは脂身の少ないものを選びます。とり肉ならささみやむね肉、豚や牛ならひれ肉を。鶏皮や脂身などは調理の際に取り分けるなどするといいでしょう。
きのこ類や海藻類などは低カロリーで食物繊維が含まれているので積極的に摂り入れたい食材です。
・食べる順番を見直し
最初に野菜やきのこ類を摂るようにするなど、食べる順番も見直します。一気に食べてしまわないよう、ゆっくりよく噛むことも心がけましょう。
体調に問題なければ、マタニティヨガやウォーキングなどの運動習慣をつけて、摂取したカロリーを消費することも大切です。分娩予定日まで残り2カ月半、妊婦さん自身と赤ちゃんのために、気を抜かないよう体重管理に努めてください。
臍帯血(さいたいけつ)バンクとは
臍帯血とは、妊婦さんとおなかの赤ちゃんをつなぐへその緒(臍帯)と胎盤内の血液のこと。臍帯血には血液や臓器の元になる幹細胞が豊富に含まれており、白血病や一部の先天性代謝異常疾患の治療に用いることができます。また、脳性麻痺や自閉症などの再生医療への活用も研究されています。
採取できるのは出産時のみで、臍帯血バンクと提携している産院でのみ行うことが可能です。将来の本人や家族の治療に使用するために保存する民間バンクと、白血病などの患者さんへの寄付として用いられる公的バンクがあります。民間バンクでは保管費用が必要となります。
妊娠30週:パパにできることは?
妊娠後期に入り、妊婦さんのおなかが大きくなるにつれ出産が近づいていることを意識するようになってきたことでしょう。自治体などで開催される両親学級にまだ参加していないようであれば、いまからでも参加できるクラスを探してみましょう。陣痛が起きたとき、妊婦さんは痛みで考える力が散漫になってしまうことがあります。陣痛が起きてから分娩までの流れをパパが把握していれば、お互いに安心できます。陣痛のときの痛み逃しなど、どんな対応をすると助けになるかなども知っておいて。
妊娠30週: お医者さんに聞くことは?
恥骨や骨盤が痛い
ホルモンの影響で骨盤周りの靭帯が緩むことや、骨盤底筋群の筋力が低下、恥骨をつなぐ恥骨結合が広がっていることなどから恥骨痛が起こることがあります。また、妊娠後期になると赤ちゃんの頭が下におりてきて恥骨を圧迫することも考えられます。あまりにも痛みがひどい場合は医師に相談をしましょう。
おなかの張りの違いについて
妊娠後期に入ると、おなかが張ることがしばしばあります。おなかが張るのは子宮の収縮に伴うものなので、生理的な現象ではありますが、早産などのサインとなることもあります。休んでも張りが収まらない、定期的に張りが続く、痛みがあるなどが、注意するポイントになりますが、その際に見分けがつくように、普段張りがあるのはどんなときでどんな状態であるかを覚えておきましょう。不安があれば、妊婦健診の際に普段のおなかの張りについて相談を。
立ちくらみや倦怠感があるとき
この時期に起こりやすいマイナートラブルとして、立ちくらみや倦怠感があります。血液量が変化していること、子宮に多くの血液が供給されていることなどが一つの原因です。からだの変化の一つですが、倒れてしまうことがないように、立ちくらみを感じたら何かにつかまったり、倦怠感を覚えたら無理をせずからだを休めたりするようにします。
普段の生活のなかでは、椅子やベッド、床などから立ち上がるときはゆっくりと動き、鉄分を含む食材や水分をしっかり摂るようにします。体調が悪くないときには運動を行い、からだの中のめぐりを良くするように心がけましょう。
頻繁に立ちくらみや倦怠感を起こすようであれば、医師に早めに相談を。
妊娠30週:よくある質問
妊娠30週の体重増加の目安は何キロですか?
妊娠30週頃の体重の増加の目安は、妊娠前の「BMI(Body Mass Index)」で考え、それぞれBMI 18.5未満の妊婦さんは妊娠前の体重+8.5kg~11kg前後、BMI 18.5~25未満の妊婦さんは+6.5kg~9kg前後、BMI 25~30以上の妊婦さんは+4kg~6.5kg前後となります。
この時期は体重の増加が一気に加速してしまいがちなので、食事のカロリーを控えたり、適度な運動を行ったりして、体重の管理をしていきましょう。体重が増え過ぎると産後に戻りにくくなることもあります。
※BMI=妊娠前の体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
妊娠30週で出産しても大丈夫?
赤ちゃんはおなかの外でも生きていけるくらいに発達が進んでいますが、まだ自力では呼吸をするのも難しい段階。NICU(新生児集中治療室)で治療を行っていく必要があります。
普段から早産の兆候がないか確認するようにしておき、違和感があればすぐに病院へ相談できるようにしておきましょう。
妊娠30週での不調の原因は?
妊娠後期となる妊娠30週頃はからだの不調を感じやすい時期。子宮の圧迫により頭痛や腰痛、胸やけ、消化不良、動悸、貧血、骨盤痛・恥骨痛、尿漏れ、むくみ、こむら返りなどさまざまなマイナートラブルが起こりやすい時期です。また、大きなおなかを支えるため、筋肉は疲労し、からだも疲れやすくなっています。心身にストレスを感じると、おなかの張りが生じることもあります。いまは不安定な体調であると考え、なんとなく体調が優れないなと感じたら、無理をせず、すぐに安静を心がけるようにしましょう。