妊娠26週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子

河野照子 先生
医学博士
日本産科婦人科学会専門医
日本周産期・新生児医学会専門医
日本超音波医学会専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠26週に知っておきたい大切なポイントは?
妊娠26週は赤ちゃんの成長が進み、妊婦さんのからだも出産や産後に向けてさまざまな変化を見せていきます。おなかが大きくなっていくと、今までできていたことが同じようにできなくなり不安を感じるかもしれません。しかし、その分、おなかのなかの赤ちゃんは成長しています。一緒に頑張っていきましょう。妊娠26週頃の赤ちゃん&妊婦さんの様子や気をつけておきたいアドバイスをお届けします。
妊娠26週は妊娠何カ月?
妊娠中期・妊娠7カ月の第3週です。妊娠後期に入るまであと2週間。安定期と呼ばれるいまのうちにできることを進めておくと安心です。
妊娠26週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠26週:赤ちゃんの大きさは?
妊娠26週頃の赤ちゃんの大きさは33cm前後、体重は650g~1000gに成長しています。大きく成長したとはいえ、まだ新生児の1/3ほど。大切に守っていってあげましょう。
妊娠26週:赤ちゃんの様子は?
パチパチまぶたを動かせるようになり、そしておなかのなかで明るさや暗さの変化を感じられるようになっています。母体を通じて生活リズムを学んでいるので、昼や夜が伝わる規則正しい生活を送るようにしていきましょう。
妊娠26週:赤ちゃんの発達は?
足を曲げ伸ばしするなど、赤ちゃんはからだを動かして筋肉などをさらに発達させていきます。からだを動かすことでさまざまな臓器が本来あるべき位置へと移動していきます。この頃には肺で呼吸をするための構造が完成し、機能を成熟させていくようになります。
妊娠26週:妊婦さんのからだは?
妊娠26週:妊婦さんのからだの様子は?
出産に向けて妊婦さんのからだもさまざまな準備を進めています。胸は乳腺が発達しサイズが大きくなっていき、乳輪や乳首はメラノサイトが活発化する影響で黒くなっていきます。乳首を守るために乳輪上の「凸凹モントゴメリー腺」も目立つようになります。凸凹モントゴメリー腺とは、乳輪にできるぶつぶつのようなもの。気になるかもしれませんが、それは赤ちゃんのためにからだが変化している証です。出産や授乳後はもとに戻っていくことが多いでしょう。
妊娠26週:妊婦さんのおなかの大きさは?
おなか全体が大きくなり、足元が見えにくくなってきます。おなかが重く、動きたくなくなるかもしれませんが、出産には体力が必要です。適度に運動をしていくことは、出産や産後に向けた体力づくり、そしてマイナートラブルの解消にもつながるので、体調をみながらぜひ毎日に取り入れていきましょう。
妊娠26週:妊婦さんが気をつけること・することは?
妊婦さんの希望を伝えるバースプラン
バースプランとは自分らしい出産をするために立てる計画です。出産のことだけでなく、出産前後の過ごし方なども含まれます。妊婦さんやパートナー、医師、助産師など、出産に関わる皆で話し合うことで、出産当日の意識を共有することができます。ただし、病院の体制や、妊婦さんや赤ちゃんの状態によっては希望をかなえることが難しい場合もあります。そこを踏まえたうえで計画を立てていきましょう。
□出産スタイル…普通分娩、計画分娩、無痛分娩など
□立ち会い出産…可か不可か。どこまでの立ち会いになるか、ママの気持ちは? パパの気持ちは?など
□陣痛時、分娩時…音楽をかけたい、アロマをとり入れたいなど
□赤ちゃんが生まれたら…家族で写真撮影、へその緒をパートナーが切る、カンガルーケアなど
□入院中…母子同室/別室、個室/大部屋、母乳育児、疲れたときは預かってほしいなど
産院によってはフォーマットが用意されている場合があるので、いつ頃にどのような形で提出するのかを確認しておきましょう。
車の運転には注意が必要
妊娠が進んでいくと車の運転にも支障があります。おなかが大きくなってくると前後や左右にからだを動かしにくくなり、周囲の確認がしづらくなってきます。注意力や集中力が散漫になってしまうことや急に眠気を感じることもあるため、より慎重に運転する必要があります。
なるべく運転は控えた方がいいのですが、難しい場合は、おなかを圧迫しないように注意しながらシートベルトを着用し、同じ体勢が続く長時間の運転は避けるようにします。また、運転中におなかが張ってしまったら、そのときはからだを休めるようにして。体調に不安を感じるようであれば無理はせず、運転を控えることをおすすめします。
静脈瘤が見られたらは心臓より足を高く上げる
妊娠中はホルモンの影響やおなかの圧迫によって下半身から心臓に血液が戻りにくくなるため、下肢表面の静脈が瘤(こぶ)状にふくらんでしまうことがあります。これを静脈瘤といい、足にみられるものは下肢静脈瘤、外陰部や太もも裏側にみられるものは陰部静脈瘤と呼ばれています。
足に静脈瘤がみられたら、足の下にクッションなどを置いて心臓より高い位置にすると症状が軽減することがあります。どちらの静脈瘤も長時間立たないようにしたり、静脈瘤用の弾性ストッキングをはいたり、足を動かす運動をしたり、入浴したりすることが対策になります。出産後、改善される場合が多いと言われています。
冷え対策で妊婦さんも赤ちゃんも快適に
血行が悪くなることでマイナートラブルを引き起こすことが多くあります。予防法のひとつとして、「冷え」対策を行いましょう。赤ちゃんが過ごす子宮のなかは体温より高めの約37度ですが、母体を温かくすることはおなかの赤ちゃんにとっても快適な環境となります。冷えの予防としては、からだを温める食事や飲み物を選ぶ、湯船にしっかり浸かる、有酸素運動や筋力をつける体操を行うなどがあります。夏でも冷房などで室温が低いと冷えてしまうことがあるので、からだのなかから温めていくことを心がけて。
早期の発見で早産を防ぐ
早産になる原因はさまざまですが、早めに対処することで赤ちゃんをおなかのなかで育て続けられる可能性があがります。定期的におなかの張りがある、痛みを感じる、出血した、おりものが増えた、陰部にかゆみがあるなどいつもと違うサインを感じたら、早めに医師に相談をするようにしましょう。
食事に気を配って妊娠糖尿病を予防
全妊婦さんの7~9%が発症すると言われる妊娠糖尿病は、妊娠後期にかけて発症率が高まっていきます。家族に糖尿病の人がいる、BMIの数値が高い肥満体型といったリスクが高い人はもちろん、妊娠前や初期に血糖値に問題がなかった人も注意が必要です。もし発症してしまうと、妊娠高血圧症候群を引き起こしたり、赤ちゃんが巨大児になってしまったり、難産になってしまったりとさまざまな影響を及ぼす恐れがあります。カロリーや糖分、脂肪分など控え、食生活に気を配るようにしてください。
妊娠26週のチェックリスト
パートナーと子育てのチームに
おなかのなかで赤ちゃんを育む妊婦さんと異なり、自身のからだに変化を感じないために実感がともなわないパートナーは多くいます。しかし、大変なことが多い妊娠期や産後を乗り越えていくためには、パートナーの協力は必要不可欠。妊娠や出産、子育ての情報を共有しながら、パートナーと一丸となって未来へと進んでいきたいものです。
例えば、妊婦健診で一緒に超音波検査の画像を見たり、両親学級に参加して出産について学んだり。赤ちゃんの顔や一緒に生活する光景を想像しながら、名前を考えるというのも大切な時間になります。
また、産後の生活をどうしていくかもきちんと話し合いを。産休、育休はどれくらいとれるのか、里帰りする場合はどれくらいで自宅に戻るのか、もしものときの預け先や保育園、幼稚園はどうするか…。初めてのことばかりでお互いの意識が重なっていないことはままあります。「分かっているだろう」「同じ考えだろう」と思わずに、話し合いの時間を設けてそれぞれの意見を伝え、2人の考えをしっかりとまとめておくと、産後のトラブルも減るでしょう。
意外と摂っている塩分を見直し
塩分を摂り過ぎてしまうと、むくみの原因になり、妊娠高血圧症候群を引き起こすリスクもあるので、摂り過ぎには注意が必要です。
特に汁物や麺類のスープ、スナック菓子や漬物、肉の加工食品などには塩分が多く含まれています。パッケージに表示されている数値をチェックして、厚生労働省の定める女性の1日の塩分摂取量6.5g未満を参考に、塩分量を調節していきましょう。
ベビーグッズの準備を進める
出産後、自宅に戻ってきたとき、どの部屋で赤ちゃんと過ごすかイメージができていますか。その生活の中で必要と思われるベビーグッズをリストアップし、さらに、いつ頃、どこで購入するかなどを検討しましょう。多様なグッズのなかには生活スタイルを踏まえると不要なものもあります。自分たちの暮らしのなかではどうかとイメージすることが大切。使用期間が短いものはレンタルなどを活用するという方法もあります。
妊娠26週:パパにできることは?
妊娠中期も後半に差し掛かり、すでに両親学級に参加したというパパもいるのではないでしょうか。ママにとって、初めての出産はもちろん、たとえ何回目であっても、リスクや痛みを伴う「出産」には不安がつきまとうもの。「ふたりの赤ちゃんを、ママがからだのなかで育てている」という意識をもって、パパ自身も出産について知ることが大切です。出産する予定の産院で可能な出産方法、そしてママが希望する出産方法は何でしょうか? パパが陣痛中や立ち会い中に何ができるかを自身で調べておくと、お互いにとって安心できる材料になるはずです。
妊娠26週: お医者さんに聞くことは?
不安が大きく感情が不安定なとき
妊娠中のホルモンバランスの影響で情緒が不安定になることも。出産が近づくにつれ、じわじわと不安が増していたり、さまざまなマイナートラブルに辛さを感じてる妊婦さんもいることでしょう。涙もろくなったり、イライラしたり、不安に押しつぶされそうになったりしますが、妊娠中の心の不安定さは妊婦さんのせいではありません。誰かに不安を打ち明けると心が少し軽くなるかもしれません。妊娠経過やからだの変化、出産のことなど、不安や気になることがあれば、抱え込まず医師や助産師さんにも相談してみてください。
赤ちゃんが小さめ/大きめといわれたとき
妊婦健診で超音波検査をしていると、医師から赤ちゃんの大きさに対してのコメントがあるかもしれません。それについて何か言及されることがなければ、あまり心配する必要はありませんが、不安を感じるようであれば、そのサイズであることは、個人差の範囲なのか、リスクがあることなのかを確認するといいでしょう。
妊娠26週:よくある質問
妊娠26週の赤ちゃんはどのような成長をしているの?
妊娠26週頃の赤ちゃんはさまざまな器官が発達し、新生児のような体形になってきています。身長は約33cm、体重は650g~1000gという大きさで、まだまだ成長の途中です。まぶたをパチパチ動かしたり、足を曲げ伸ばしたり、からだのいろんな場所を動かしながら、筋肉や感覚を鍛えていっています。外部からの刺激も伝わるようになってきているので、妊婦さんはもちろん、パートナーも赤ちゃんとのコミュニケーションをぜひ楽しんで。
妊娠26週でやることは?
まもなく妊娠中期の終わりとなる妊娠26週のうちにしておきたいことは、生活習慣の見直しと、産後に向けた準備です。
カロリーや塩分、糖分、脂質などを考慮した食生活、適度な運動、規則正しい睡眠などを心がけ、健康的な生活を送ることは妊娠合併症やマイナートラブルを防ぎ、おなかの赤ちゃんの健やかな成長をサポートすることに繋がります。
また、産後の準備は動けるうちに進めておくと安心。バースプランを検討したり、ベビーグッズをリストアップしたり、保育園の情報を集めたりなど、できることはさまざまあります。しかし頑張りすぎて切迫早産などになると本末転倒なので、無理なくできることを、を心がけて。