妊娠24週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子

河野照子 先生
医学博士
日本産科婦人科学会専門医
日本周産期・新生児医学会専門医
日本超音波医学会専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠24週に知っておきたい大切なポイントは?
妊婦健診は週2回となり、出産へ近づいている実感が高まるでしょう。赤ちゃんの発達も進み、さらに胎動を感じるようになってきます。妊娠24週頃の赤ちゃん&妊婦さんの様子や気をつけておきたいアドバイスをお届けします。
妊娠24週は妊娠何カ月?
妊娠中期・最後のひと月となる妊娠7カ月の第1週です。後期に入るとおなかもますます大きくなり動きにくくなっていくため、いまのうちにできることをなるべく進めておきましょう。
妊娠24週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠24週:赤ちゃんの大きさは?
妊娠24週頃の赤ちゃんの大きさは、身長約30cm~32cm、重さは約650g~850gほど。大腿骨長(FL)は約4cmにもなりました。1カ月の間にぐんぐん大きくなり、妊娠20週頃に比べて、身長は1.5倍~2倍、体重は2倍~3倍にもなっています。
妊娠24週:赤ちゃんの様子は?
骨格や脂肪、筋肉がついてきた妊娠24週頃の赤ちゃんは、からだ全体がふっくらとしてみえます。まつ毛や髪の毛などの体毛も増え、手足のつめも確認できるようになってきます。
妊娠24週:赤ちゃんの発達は?
感覚器官の発達がさらに進み、眼球運動ができるようになり、聴覚もより鍛えられていきます。また、脳も大きく発達していきます。生命維持の機能を司る部分を中心に発達していた脳は、人間らしい高度な精神活動を司る大脳皮質が発達しはじめていきます。
妊娠24週:妊婦さんのからだは?
妊娠24週:妊婦さんのからだの様子は?
妊娠24週頃になると、おなかはもちろん、乳房も大きくなってきます。急激に体型が変化することで妊娠線ができることがあるので、気になる妊婦さんはしっかりケアをしていきましょう。
妊娠24週:妊婦さんのおなかの大きさは?
子宮がおへその上にまで達し、おなかもますます大きく、前へとせり出してきます。仰向けで寝ることが息苦しく感じてしまう時は、寝る姿勢や向きを変えてラクなポジションを探していくといいですよ。
妊娠24週:妊婦さんが気をつけること・することは?
妊娠糖尿病に注意
この時期に気をつけたい病気の一つが「妊娠糖尿病」で、妊娠24~28週頃の中期検査で血糖値の検査が行われます。
妊娠糖尿病とは妊娠中に発見される糖の代謝異常のことです。妊娠が進んでいくと胎盤から分泌されるホルモンの影響で血糖値を下げるインスリンの働きが弱まるため血糖値が高くなりやすく、母体だけでなく赤ちゃんに対してもさまざまな合併症を引き起こすリスクがあります。
妊婦さんには妊娠高血圧症候群、羊水過多、難産、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症の恐れがあり、赤ちゃんには巨大児、新生児低血糖などの恐れがあります。
出産後に血糖値は正常に戻ることが多いのですが、のちに2型糖尿病を発症する可能性が高くなるため、気をつけておくことが大切です。
つらい便秘は食事や運動で改善
妊娠中期に起こりやすいトラブルに便秘もあります。大きくなった子宮による腸の圧迫や運動不足、プロゲステロンという女性ホルモンの影響で大腸の動きが低下することで、便秘が引き起こされてしまいます。
便秘を予防するためには、食物繊維の多い食材や腸内環境を改善する食材を摂ること、こまめに水分を補給すること、適度に運動をすることなどが挙げられます。
便秘自体がおなかの赤ちゃんに影響を及ぼすことはありませんが、排便の際に強くいきんでしまうことには不安を感じることもあるでしょう。目安はしっかりとした排便が週3回あるとよいでしょう。生活を見直しても改善されないようであれば、医師に相談を。状態に合わせて酸化マグネシウム(便をやわらかくする)などの下剤が処方される場合もあります。
おりものの変化に注意。「カンジダ膣炎」について
出産の際に赤ちゃんが通る道となる腟。腟内を健康に保つ役割をもつものが「おりもの」です。妊娠するとおりものの量が増えますが、以前と比べて色やにおいに変化がなく、性器のかゆみなどがなければ特に問題はない場合が多いです。
おりものがカッテージチーズのような白いかす状であったり、強いかゆみがある場合は「カンジダ腟炎」かもしれません。常在菌のカンジダですが、免疫力の低下やホルモンの変化などから腟内で増殖してしまうとカンジダ腟炎を発症することがあります。かゆみや大量のおりものがなければ必ずしも治療が必要ではありませんが、病状によっては腟剤を使用したり、軟膏が処方されます。
切迫早産を予防する
なるべく長く赤ちゃんをおなかのなかで育ててあげるためにも、気をつけておきたいのは切迫早産の予防です。バランスのとれた食事をしっかりとる、睡眠時間を確保するなどの生活習慣に気を配るとともに、兄弟を育てる妊婦さん、働く妊婦さんは負担を軽減させる対策を検討していきましょう。疲れや負担が大きすぎるとおなかが張って切迫早産のリスクが高まります。パートナーや家族、職場の上司などに相談し、自身と赤ちゃんのためにできる最善の環境を考えていきます。
シートベルトを着けるときは
おなかが大きくなってくると車のシートベルトを着けることに苦しさを感じることがあるかもしれません。その場合は、おなかを圧迫しない位置でシートベルトを着用するといいでしょう。肩から腰に斜めにかける肩ベルトを胸の間からおなかの側面に向かって、腰にかける腰ベルトはおなかのふくらみを横切らないよう、おなかの下のなるべく低い位置に通すようにすると、圧迫の負担を減らすことができます。
万が一の時に妊婦さんと赤ちゃんを守るシートベルト。しっかり着用することが安心につながります。
妊娠24週のチェックリスト
鍛えておきたい骨盤底筋
子宮や膀胱などの内臓を支え、排尿や排便をコントロールし、からだの下から姿勢をキープする役割を持つ「骨盤底筋」。骨盤の底、尿道や肛門、腟のまわりにある筋肉の総称で、骨盤底筋群とも呼ばれています。妊娠中は大きくなった子宮を支え、出産時には押し広げられることで、骨盤底筋は損傷したり、ゆるんだりしてしまいます。ゆるみすぎてしまうと妊娠後期の尿漏れや、産後にぽっこりおなかになりやすくなる原因に。骨盤底筋をしなやかな筋肉にしておくためにもエクササイズなどで、鍛えておくようにしましょう。
バースプランについて知っておこう
どのような出産がしたいかを計画するバースプラン。自分がどのような状態で出産に臨みたいのか、夫や家族は立ち会いをするのかなどの希望を話し合い、また、実際に産院でその希望が実現できるかを相談します。
バースプランの相談を受けていない産院もあるので、自分の産院では対応しているかをまずは確認しておきます。産院に相談するタイミングもまちまちなので、あらかじめその時期を確認しておき、バースプランを提出するそのときまでに希望をまとめられるよう、どのようなことができるのか、したいのかをパートナーと話し合っておくといいでしょう。イメージができないようであれば、他の人がどんなバースプランを選んだのか調べてみても。
腰痛や肩こりを感じたら
おなかや胸が大きくなるにつれて、からだの重みが増し、腰痛や肩こりを感じることがあります。妊娠中はからだの重心が変わり、どうしても姿勢が悪くなってしまうので、特にスマホやタブレットを見ているとき、歩いているとき、立っているときなどは姿勢を正すことを意識してみて。またホットタオルで温めたり、ゆったりお風呂に入ったりして、痛みやこりを感じる部分の血行を促すのも緩和する方法の一つです。
これからマタニティブラを選ぶなら
発達していく乳腺や乳頭を守る、バストの形をキープするなどのために、妊婦さんが着用するマタニティブラ。妊娠24週頃になると、妊娠前よりも1カップ、そして臨月までにはさらに1~2カップほどバストサイズが大きくなると考えられます。そのためマタニティブラを選ぶ時は、ぴったりではなく、少し大きめのカップサイズを選び、ストラップやホックで調整をするようにしましょう。出産後にも使いやすいものを探しているなら、授乳しやすい前開きタイプや、赤ちゃんの肌に当たっても心配が少ないようなソフトな素材を選ぶといいでしょう。
妊娠24週:パパにできることは?
重くなったからだを支えるために、妊婦さんはさまざまな箇所に疲れやこり、痛みを感じるようになっています。妊娠中はエステや整骨院などでマッサージを受けることが難しくなるので、パパがマッサージをしてあげるのはいかがでしょうか? 妊婦さんが苦しくない姿勢で肩こりや足のむくみに対してやさしくマッサージしてあげれば、リラックス効果も期待できるかもしれません。うつぶせになったり、おなかを圧迫したりするような体勢はNG。ツボ押しにも注意が必要です。事前に確認して、子宮の収縮を促すようなツボは刺激しないようにしましょう。
妊娠24週: お医者さんに聞くことは?
小さな気がかりも確認
妊娠24週からは妊婦健診が2週間に1回になるところが増えます。出産に向けて妊婦さんやおなかの赤ちゃんの様子に問題がないかを確認するタイミングなので、些細なことでも気になったことや不安があれば、妊婦健診で相談しておきましょう。本人だからこそ気づいた小さなサインが何かのトラブルを未然に防ぐきっかけになるかもしれません。また、不安を一つ解消することができたら、気持ちを安定させることにも繋がります。ストレス緩和のためにも、遠慮せずに心配事の確認をしっかりしておくといいでしょう。
おなかの張りについて
おなかの張り具合は、個人の感覚によることもあるため、感じ方がわかりにくく、伝えにくいかもしれません。気になるおなかの張りがあった時は、間隔はどれくらいか、どのくらい続くのか、どのような時に張りやすいか、そのほかにどのような症状があるかを伝えるとわかりやすいかもしれません。今感じているおなかの張りが危険な兆候であるかどうかを医師に診断してもらうといいでしょう。
妊娠24週:よくある質問
妊娠24週でどんな変化がありますか?
妊娠24週は母体やおなかの赤ちゃんにさまざまな変化があります。妊娠24週になると妊婦さんのおなかや胸はますます大きくなっていきます。おなかの出方は、子宮がおへその上にまで達し、前へとせり出します。
赤ちゃんはからだ全体がふっくらとしてみえます。体の毛やつめ、脳、感覚器官なども発達し、生まれて生きていくための準備をどんどん整えています。
妊娠24週の胎動は?
妊娠24週頃には、以前に増して胎動を感じられるようになります。さまざまな場所が発達してきているおなかのなかの赤ちゃんは、自分ができる動きを試していることでしょう。胎動がはっきりわかるようになってきたら、おなかに話しかけたり、なでたり、キックゲームをしたりといろんなコミュニケーションが楽しめるはず。パートナーとも共有したい時間になります。
妊娠24週で赤ちゃんが生まれるリスクは?
赤ちゃんのからだの機能が成熟し、子宮の外で生きていくための準備が整うのは妊娠37~41週、正産期といわれる時期です。妊娠24週で生まれた場合、早産となり、赤ちゃんはまだからだの多くが発達段階にある状態。そのため生まれた赤ちゃんはNICU(新生児集中治療室)に入り、さまざまな処置を受けながら、外の世界で生きていく力をつけていきます。
早産の恐れがある「切迫早産」と診断されたときは、早産に移行しないよう、安静にしたり、入院をしたりしてなるべく長くおなかのなかに赤ちゃんがいられるように過ごします。