妊娠22週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子

河野照子 先生
医学博士
日本産科婦人科学会専門医
日本周産期・新生児医学会専門医
日本超音波医学会専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠22週に知っておきたい大切なポイントは?
なんとなく安定して過ごせる日が続く妊娠22週。残り半分ほどの妊娠生活を少しでも心地よく過ごせるように、食事や運動などの生活習慣の見直しを行っていくのもよいでしょう。妊娠22週は、万が一赤ちゃんが早い時期に生まれてしまった場合の流産と早産の境目の時期であり、助かる可能性がやっと出てくる週数。赤ちゃんのからだの機能は成熟していないため、まだまだおなかのなかで過ごす時間が必要です。
妊娠22週頃の赤ちゃん&妊婦さんの様子や気をつけておきたいアドバイスをお届けします。
妊娠22週は妊娠何カ月?
妊娠中期・妊娠6カ月の第3週です。赤ちゃんにとって22週は大きな節目。ここまで大切に育んできた妊婦さん自身をたくさん褒めてあげましょう。
妊娠22週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠22週:赤ちゃんの大きさは?
妊娠22週頃の赤ちゃんは、頭からおしりまでの長さが約25cm~27cm、重さは約450g~550gの大きさになっています。妊婦健診で超音波検査を行うと赤ちゃんの姿は画面いっぱいに! ぐんぐん成長している様子がうかがえることでしょう。
妊娠22週:赤ちゃんの様子は?
おなかのなかで日々成長していく赤ちゃん。羊水のなかで回転してみたり、キックしたり、しゃっくりをしたりと、大きく動くようになってきました。それらの動きは胎動となってママに伝わってきているかも。赤ちゃんからのサインを感じとってください。
妊娠22週:赤ちゃんの発達は?
さまざまな器官が発達していく、妊娠22週頃の赤ちゃん。小さな心臓は大人の倍くらいの速さで、力強く血液を全身に巡らせていきます。赤ちゃんと胎盤を繋ぐへその緒はさらに太くなっていきます。
妊娠22週:妊婦さんのからだは?
妊娠22週:妊婦さんのからだの様子は?
妊娠22週頃の妊婦さんのからだは、赤ちゃんの成長とともに子宮が大きくなり、羊水も増えていきます。その分おなかの重さが増し、気をつけないとバランスを崩してしまうかもしれません。からだやホルモンバランスの変化から気持ちが不安定になることもあります。
妊娠22週:妊婦さんのおなかの大きさは?
子宮が大人の頭くらいの大きさになる妊娠22週。子宮の上の部分はおへその位置くらいまであがっています。おなかの出方で性別を判断する言い伝えがありますが、医学的な根拠はありません。
妊娠22週:妊婦さんが気をつけること・することは?
おなかの張りや痛み、出血に注意
妊娠22週頃に気をつけておきたいことに、切迫早産があります。
赤ちゃんが子宮の外の世界で生きていくためのからだの機能が十分に成熟し、母体にとっても安全に出産できるとされる妊娠37~41週を正産期といいます。この正産期より前の、妊娠22~36週に出産することを「早産」といい、子宮の収縮(おなかの張りや痛み)が頻回にみられたり、子宮の出口が開いて、早産のおそれがある状態を「切迫早産」といいます。
妊娠22週の赤ちゃんは流産時期からやっと早産時期に入ったばかりの未熟な赤ちゃんです。切迫早産から早産へ移行させず、できるだけおなかのなかで過ごせるようにするためには、兆候を感じたら早めに受診し、適切な対応をしていくことが大切です。
□切迫早産の兆候と考えられる症状
・おなかの張りや痛みが続く
・おりものが増えた、おりものに出血が混じっている
・出血がある
いつもと違うような状態を感じたら、早めに産院に相談しましょう。また、妊婦健診で自覚症状がなくても早産の危険を指摘される場合もあるので、体調に問題がなくても健診は必ず受けるようにしてください。
□切迫早産や早産を防ぐためにできること
切迫早産や早産の原因のひとつに子宮への感染があります。心身のストレス過多や睡眠不足は免疫力が落ちることがあるので要注意。また歯周病なども原因になりえます。
ストレスをあまり感じないようにライフスタイルを見直したり、セックスをする際にはコンドームを使用したり、歯みがきや歯科健診で歯周病を予防するのも良いかもしれません。
また、過去に早産を経験している、多胎妊娠、痩せぎみの人なども早産の傾向があるため、落ち着いて過ごすことを普段から心がけるようにしましょう。
積極的に摂りたいカルシウム
妊娠4~6ヶ月頃に石灰化がはじまると言われている赤ちゃんの歯。一部の永久歯の歯のもととなる芽(歯胚)も作られていきます。また、妊娠22週頃の赤ちゃんは骨格もしっかりしてくる時期です。
歯や骨を作っていくもととなるのは妊婦さんが摂取するカルシウム。足りない場合は母体から補われます。妊娠中はカルシウムの吸収率が高まるため、必要以上に摂取する必要はないのですが、成人女性の1日の推進量650mgは目安にとりましょう。またカルシウムの吸収にはビタミンDやビタミンKも必要となるので、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。
カルシウムが多く含まれる食材には、牛乳やヨーグルトなどの乳・乳製品、ちりめんじゃこや干しエビなどの魚介類、切り干し大根や水菜などの野菜、木綿豆腐や納豆などの豆類などがあります。
イライラの切り替え方法をみつけて
思うようにからだを動かせないことやマイナートラブル、出産への不安といったストレスもあり、イライラしがちなこの時期。心身への強いストレスは、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンを低下させ、キレやすくなったり、落ち込みやすくなったりしてしまいます。また、ストレスが母体の血流に影響を及ぼして、赤ちゃんにもその負担がかかってしまうことがあります。
懸命におなかのなかで赤ちゃんを育てている今、ついイライラしてしまうこともあるでしょう。辛さの原因には解消できることも、解消できないこともあります。そんなときに自分なりの切り替え方法を作っておくと少しラクになれることがあります。
(イライラしたときの切り替え方法)
・深い呼吸を何度か繰り返す
・温かい飲み物を飲む
・好きな音楽を思いきり聴く
・おしゃべりをする
・ストレッチなどの軽い運動をする
・お風呂に入る
・自分の趣味に没頭する
また、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌は簡単に高めることができます。日光を浴びる、歩行や咀嚼などのリズム運動をする、セロトニンの材料となるトリプトファンを含む食材を摂取することなどでセロトニンの分泌を高めていくことができます。トリプトファンは乳製品や大豆製品、ナッツ類に多く含まれています。日常的に行えることが多いので、積極的に行っていきましょう。
アロマテラピーで気をつけたいこと
精神を落ち着かせるもののひとつにアロマテラピーがあります。妊娠中期以降は使用可能といわれているものもありますが、精油の中には妊娠中は使ってはいけない、注意が必要なものがあります。医師や助産師、専門知識を持つ人などに相談したうえで使用するようにしてください。
妊娠22週のチェックリスト
妊娠期の生活習慣の見直し
安定している時間が多い妊娠22週頃は、赤ちゃんと自分のために生活習慣を見直してみるのに良い頃合いです。夜にしっかり眠れているか、必要な栄養は摂れているか、ストレスをため込まないように過ごせているかなどを振り返って、いまできそうなことを考えてみましょう。
ウォーキングやヨガ、マタニティビクスなど、体調の良い日に運動を行うとストレスの解消にもなり、体重の増加を抑え、よい睡眠を促すことにもなります。この先はもっとからだを動かしづらくなるので、ぜひこの時期からできることをトライしてみて。
注意しておきたい妊娠高血圧症候群
妊娠前、健康に関して特に問題がなかったとしても、妊娠をきっかけに新たに病気を発症してしまうことがあります。代表例のひとつが「妊娠高血圧症候群」。妊娠20週以降に上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上になった場合に診断されます。特に収縮期血圧が160mmHg以上、または拡張期血圧が110mmHg以上になった場合は重症であり、より厳重な管理が必要になります。
普段は高くなくても、病院でだけ血圧が上がってしまう「白衣高血圧」の場合もありますので、血圧が高めの方は自宅で血圧を測定するように言われることもあります。
妊娠高血圧症候群が進行すると、母体にはけいれん発作(子癇しかん)や脳出血、腎機能障害をきたす恐れがあり、赤ちゃんにはおなかの中で苦しくなったり、発育が伸び悩んだりする恐れがあります。
健康的な生活を送ることで発症を抑えられる可能性がありますので、ストレスをためず、適度に運動し、体重管理にも気をつけて過ごしましょう。
骨盤の痛みや胸やけを感じたら
妊娠が進み、子宮が大きくなっていくと骨盤の痛みや胸やけを感じることがあります。不快な症状を完全に解消することは難しいかもしれませんが、普段の姿勢を整えることで軽減できる場合があります。立ち姿勢や座り姿勢を鏡でチェックして、腰が反り過ぎないように気をつけてみましょう。
妊娠22週:パパにできることは?
妊娠22週頃になると、妊婦さんのからだが大きく変化をみせていることに気がつくと思います。おなかを守ったり、重くなったりすることで、これまでのように動けずストレスを感じてしまう人も多くいます。また気持ちが沈んでしまうこともあります。そんな妊婦さんを一番近くでフォローできるのはパパ。不安なときは話を聞いてもらうだけでも、落ち着けることがあります。感情が不安定になるのは妊娠中に分泌されるホルモンによるものなので、しっかり寄り添ってあげてください。
妊娠22週: お医者さんに聞くことは?
気になるおりものや下腹部痛があるときは
いつもとは違うおりものがでたり、繰り返すような下腹部痛があったりするようであれば、早めに受診をしましょう。おりものの色や形状、どのタイミングでそうなったか、ほかに自覚する症状があるかなどをきちんと伝え、医師の指示を仰ぎましょう。体調があまりよくないと感じたら、安静にすることを心がけて。
旅行を計画する前に
大きなトラブルもなく安定した状態が続くこの時期に旅行を計画している妊婦さんがいるかもしれません。しかし遠くへ行く場合は、もしものときに対処できるかが不安なところ。出発前には体調がよくても、旅行先で腹痛や出血を起こしてしまい、受診や入院が必要になるケースもあるので、そろそろ遠出は控えた方が良いでしょう。
妊娠22週:よくある質問
妊娠22週で生まれた赤ちゃんは早産ですか?
妊娠22週で生まれた赤ちゃんは早産です。妊娠37~41週の正産期より早い、妊娠22~36週で赤ちゃんが生まれることを「早産」といいます。妊娠22週で生まれた赤ちゃんは、非常に未熟な状態で生まれてくるため、呼吸や体温調節、栄養摂取など、多くの面で医療的なサポートが必要となります。
妊娠22週の壁とは何でしょうか
妊娠22週以降に生まれる赤ちゃんは、おなかの外で育つことができる可能性が出てくるため、医療サポートを受けることができるようになります。そのため、医療用語ではありませんが、大きな節目として「妊娠22週の壁」と言われることがあるようです。
この時期に生まれた赤ちゃんは、NICU(新生児集中治療室)にて退院できるようになるまで24時間体制で見守られます。
しかし赤ちゃんが無事に育っていくためには、なるべくおなかのなかで過ごせるようにすることが大事です。日々の生活に気を配り、普段と違う兆候が現れたら早めに病院を受診しましょう。
妊娠22週の体重増加の理想は?
赤ちゃんの体重が増えるだけでなく、羊水や胎盤なども重くなっていくため、妊婦さんの体重は必然的に増えていきます。しかし、急激な体重の増加は妊娠合併症の原因にもなりかねません。毎日体重計に乗ったり、食生活を見直したりして、ゆるやかな増加となるように気をつけていきましょう。
妊娠22週でも眠いのはなぜ?
妊娠中に眠気やだるさを感じるのはよくある症状です。ホルモンの影響が強い妊娠初期にその症状が顕著ですが、妊娠中期においても眠さを感じる人もいます。その原因として、おなかが大きくなったことで寝苦しかったり、トイレが近くなって眠りが浅くなったりすることなどが挙げられます。。また、体重の変化や貧血などでからだが疲労していることも。状況が許せば眠れるときに仮眠をとり、難しい場合はリフレッシュする方法を考えましょう。