妊娠21週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子
井畑穣 先生
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
母体保護法指定医
日本婦人科腫瘍学会認定 婦人科腫瘍専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠21週に知っておきたい大切なポイントは？
妊娠21週は長い妊娠期間の折り返し地点。大きくなっていくおなかのなかで、赤ちゃんは脳の発達が進み、動きにさらに変化が表れます。赤ちゃんとのコミュニケーションとして胎教をする妊婦さんも増えてくる頃です。
妊娠21週頃の赤ちゃん＆妊婦さんの様子や気をつけておきたいアドバイスをお届けします。
妊娠21週は妊娠何カ月？
妊娠中期・妊娠6カ月の第2週です。妊娠21週は出産予定日までの妊娠期間の半ば過ぎ。愛しいおなかの赤ちゃんと出会えるまであと半分になりました。
妊娠21週：赤ちゃんの成長・発達は？
妊娠21週：赤ちゃんの大きさは？
妊娠21週頃の赤ちゃんの頭の大きさは5cmほど。妊婦健診の超音波検査で測定することができる胎児の頭の横幅をBPD（児頭大横径）と呼び、FL（大腿骨長）、AC（腹部周囲長）の3つの数値をもとに赤ちゃんの体重を推定します。
赤ちゃん大きさは、この頃ぐらいから個人差が見られるようになります。頭からおしりまでの長さは約20～25cm、重さは400g前後。標準的な大きさよりも、前回の健診からどのくらい成長しているかを確認していくといいでしょう。
妊娠21週：赤ちゃんの様子は？
妊娠21週頃になると、脂肪が増えてきて、より赤ちゃんらしさを感じるからだつきになっていきます。眉毛や髪の毛もさらに伸びてきています。超音波検査ではわかりませんが、この時期は色素が入っていないため白い毛です。見えていないところでも実は変化を遂げています。
妊娠21週：赤ちゃんの発達は？
妊娠21週頃の赤ちゃんの大きな発達に脳の成長があります。神経細胞が作られはじめ、脳の表面積が増えていきます。脳が成長していくことで、からだの動きがより活発になっていきます。
妊娠21週：妊婦さんのからだは？
妊娠21週：妊婦さんのからだの様子は？
妊娠21週頃は赤ちゃんが大きくなっていくと同時に子宮も大きくなっていき、胃や血管に圧迫を感じることがあります。そのため胸やけや消化不良、高血圧、こむらがえりなどのマイナートラブルが起こることも。
妊娠21週：妊婦さんのおなかの大きさは？
赤ちゃんの成長とともに、おなかも大きくなっていきます。前にせり出すおなかを支えるためについ腰を反ってしまうことに加え、妊娠中期になると出産に向けて骨盤まわりの靭帯を緩めるリラキシンというホルモンの分泌が増えていき、腰への負担が増加。腰痛を起こしやすい状態になっているので、起き上がる時や物をもつ時、かがむ時など、日常のちょっとした動作にも注意をしていく必要があります。
妊娠21週：妊婦さんが気をつけること・することは？
胎教はリラックスとしてもおすすめ
胎動を感じるようになる妊娠21週頃は、おなかの赤ちゃんに呼びかける時間が多くなり、赤ちゃんに対して「何かをしてあげたい」と思うこともあるでしょう。
例えば、胎内教育、胎教。最近では、早期教育としてではなく、妊婦さんがリラックスして過ごすことでおなかの赤ちゃんによい影響を及ぼすものとして取り入れることが多いそうです。
「これをしなければ」と考えてしまうとストレスのもとにもなりかねません。ストレスが強くなるとママの血流が悪くなり、赤ちゃんへと届く酸素量が減ってしまうという逆効果に。難しく考えずに赤ちゃんとコミュニケーションをとるイメージで行ってみるといいでしょう。
（胎教の例）
・おなかの赤ちゃんに名前をつけて呼びかける
・ゆったりとした音楽、好きなアーティストの音楽を聴く
・「おはよう」「おやすみ」などの挨拶をする
・今日あったことを話す
・優しくおなかを触る、なでる、ノックする
・絵本の読み聞かせをする
胎教を通じて赤ちゃんとのコミュニケーションを重ねていくことで、愛情もさらに深まっていくといいます。パートナーと一緒に行うのもおすすめです。
胎動をさらに感じるようになったら「キックゲーム」も！
赤ちゃんに呼びかけながらおなかをノック。キックで応えてくれたら、またノックを返します。逆に赤ちゃんがキックしてきた時に、こちらから呼びかけながらノックをして応えてもいいでしょう。赤ちゃんが反応を返してくれないこともありますが、コミュケーション遊びの感覚でトライしてみて。
妊娠21週までは切迫流産に注意
性器出血があったり、おなかの張りを感じたり、強い腹痛などがあった場合はなるべく早めに受診を。妊娠22週未満でこれらの症状があっても赤ちゃんが元気であれば「切迫流産」と診断され、そのまま妊娠を継続できる可能性が高いと言われています。入院や自宅安静と言われたときは指示に従い、赤ちゃんと母体を第一に考えて過ごしましょう。
切迫流産を予防することは難しいかもしれませんが、負荷のかかる長時間の労働やストレスはリスクを高めます。穏やかに過ごせるように配慮することが大切です。
妊娠22週以降になると同じ状態でも「切迫早産」と呼ばれるようになり、早産の恐れが高い状態となります。
おなかが大きくなってからのセックス
妊娠中も体調が悪くなく、医師から特に指摘がないなら、コンドームをつけるなど感染予防を心がけていればセックスに問題はありません。おなかが大きくなってきたら、おなかを圧迫しないよう注意を。無理のない体位で行うようにしてください。
ただし、おなかが張っているときや、出血がみられるときはNG。また、性交中に子宮が収縮し、おなかに張りを感じたら中止してください。子宮の収縮は切迫早産のリスクが高まるとも言われているため、兆候を感じるようであれば絶対に避けましょう。
おなかに赤ちゃんがいるいま、妊娠前とは状況や気をつけるべきことが異なっています。どのようなコミュニケーションがお互いに必要かをパートナーとよく話し合っていきましょう。
妊娠21週のチェックリスト
マイナートラブルの解消法
おなかが大きくなっていくことで重心が変わったり、子宮に圧迫されて下半身の血流が悪くなったり。からだが変化したことで、足がつる（こむら返り）、けいれんなどの症状が現れることがあります。
つった時は、つった方のふくらはぎをやさしく伸ばしたり、温めたりすると解消されていきます。こむら帰りを予防するためには、姿勢を正し、締めつけるような下着を避けるといいでしょう。また、水分やミネラルの不足なども原因になり得るため、食事や飲み物にも気を配りましょう。
自治体や病院の両親学級をチェック
妊娠中期頃の妊婦さんとそのパートナーを対象にした、出産や産後について知ることができる「両親学級」が自治体や病院、企業などで開催されています。「パパママ教室」「両親教室」など名前は主催者によって異なります。
目的や内容によって、妊婦さんだけのクラス、夫婦で参加できるクラスなどがあります。人形をもちいて赤ちゃんの抱き方や沐浴などを体験したり、出産方法の解説を聞いたりすることができます。妊娠中のからだの重さを体感する妊婦体験があるクラスも。
必ず参加しなくてはならないものではありませんが、同じようなプレパパ・プレママたちと妊娠・出産について学ぶことは得ることが多くあります。休日開催の場合は予約が困難なこともあるので、余裕をもってスケジュールを立てておきましょう。
妊娠21週：パパにできることは？
妊娠21週頃になると、ママのおなかが目立つようになり、そろそろパパの実感が高まってきた方もいるのではないでしょうか。
出産や赤ちゃんのお世話の方法を具体的に学ぶことができる両親学級へは、「付き添い」という感覚ではなく「自分ごと」として参加を。赤ちゃんの重さの人形を抱っこすると、小さいけれども確かな重みに命を感じられるかもしれません。パートナーのおなかにいる赤ちゃんのパパはあなたです。協力したり、分担したり、赤ちゃんとの生活をふたりで作っていくことを想像してみましょう。
妊娠21週: お医者さんに聞くことは？
赤ちゃんの様子をきいてみよう
ふっくらしてきて赤ちゃんらしさが増すこの時期、妊婦健診の超音波検査で、動いている姿を見ることもあるでしょう。いま何をしているのか、何が成長しているのかなどを確認できるとさらに愛おしさを感じられます。
胎動を感じられなくて不安
赤ちゃんの位置や母体によって胎動の感じ方には個人差があります。また、まだこの時期ははじめての胎動を感じたあとも、胎動があったりなかったりすることがあります。しかし、急に感じられなくなったというときは、姿勢を変えるなどして様子を見てみましょう。少しでも不安を感じる場合は、妊婦健診で問題を指摘されていなくても、いままでの胎動の様子や、最後に感じたタイミングなどと一緒に、ためらわず受診して相談してください。
ひどい腰痛で日常生活が辛かったら
以前から腰痛をたびたび感じている人でなくとも、妊娠中期になると姿勢やホルモンのバランスの変化で腰痛を感じるようになるかもしれません。辛いときは骨盤ベルトを試してみるのもおすすめです。正しく装着しないと効果が出にくいので、産婦人科で正しいつけ方を指導してもらうと良いでしょう。最近は、理学療法士さんが腰痛を含めたからだの異常について理学治療を行っている施設も増えています。
なお自己判断で湿布薬や鎮痛剤を使うのはNG。飲み薬ではない湿布薬は気軽に使ってしまいがちですが、妊娠中は使用できないものもあるため必ず医師に相談を。使い方、飲み方などもしっかり確認しておきましょう。
切迫流産と言われたら
不正な出血やおなかの張り、痛みを感じて受診すると、妊娠21週では流産の可能性が考えられる「切迫流産」と診断される場合があります。
その場合、自宅安静と指示されることがあるのですが、上の子がいるなど自宅で安静にしていることが難しいようであれば、その状況もあわせて相談を。どのように過ごすと妊娠を継続できる可能性が高くなるかを考えていきましょう。
妊娠21週：よくある質問
妊娠21週でつわりがぶり返した。なぜ？
妊娠21週頃に胸のむかつき、吐き気や嘔吐などを感じることがあります。妊娠初期にあったつわりがぶり返してきたのではないかと不安になるかもしれません。妊娠中期の胸のむかつき、吐き気や嘔吐といったつわりに似た症状は、大きくなった子宮の胃や腸の圧迫によることが多くあります。それによって消化器官の運動が低下していることが原因です。
解消する方法としては
・1回に食べる量を減らし、その分回数を増やす
・脂っこいものはなるべく避け、消化の良い食品を選ぶ
など食事の内容や回数などを見直してみましょう。
あまりひどい場合は、母体だけでなく赤ちゃんへの影響も心配なため医師に相談を。また、別の病気の症状としてあらわれていることもありますので、様子を見て改善されない場合はこちらも相談が必要です。
妊娠21週ですが胎動を感じない日があります
妊娠21週頃では胎動を感じられないこともあります。この時期の赤ちゃんはまだ小さく、赤ちゃんの動きや妊婦さんのからだの状態などによって、胎動をキャッチできないことも多くあります。
おなかが大きいと姿勢がつい丸まってしまいがちですが、背筋を伸ばすと胎動を感じられることがあります。また、ゆったりお風呂に入ってみたり、ベッドに静かに横になってみたり、リラックスした状態も胎動を感じやすくなります。
もし活発に胎動を感じていたのに急に感じられなくなってしまったのであれば、姿勢を変えるなどして様子を見て、それでも変化がないようであれば医師に相談をしてみましょう。
妊娠21週でおなかにピンク色の線があらわれました。これは何ですか？
妊娠21週でおなかにピンクや紫っぽい色の線があらわれた場合、考えられるのは「妊娠線」です。おなかが急激に大きくなることで皮膚が引き伸ばされることにより、皮膚の深い部分にある真皮や皮下組織が断裂してできるものです。おなかだけでなく、バスト、太もも、お尻などにもできることがあります。皮膚の乾燥が強い場合に起こりやすいので、妊娠線ができるのを防ぐためにしっかり保湿ケアをしましょう。
