妊娠16週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子


井畑穣 先生
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
母体保護法指定医
日本婦人科腫瘍学会認定 婦人科腫瘍専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠16週に知っておきたい大切なポイントは?
今週から妊娠5カ月に入ります。胎盤が完成し、これまでの不安定な体調が落ち着いてくる頃。食欲が出てきたり、安産祈願の「戌の日」のお参りがあったりと、活発に動きたくなる時期ですが、赤ちゃんに酸素や栄養を届けるためにママの心臓はこれまで以上に頑張っています。妊娠前のからだに戻ったわけではないので、食生活や日常の活動でも妊娠していることを意識して過ごすようにしましょう。そんな妊娠16週頃に注意しておきたいことや、やっておきたいことをご紹介します。
妊娠16週は妊娠何カ月?
妊娠16~19週にあたる妊娠5カ月の最初の週です。今週から、比較的体調が安定する「妊娠中期」といわれる時期に入ります。日本では、多産でお産の軽い犬にあやかって、妊娠5カ月の最初の「戌の日」に安産祈願をする風習があります。
妊娠16週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠16週:赤ちゃんの大きさは?
赤ちゃんは急成長を続け、100g程度になりました。脳や内臓の機能も成長し、からだは丸みがでてふっくらしてきます。これからさらに脂肪がつき、からだの大きさが急成長していきます。
妊娠16週:赤ちゃんの様子は?
ママのからだから赤ちゃんに栄養や酸素を届ける胎盤が完成します。胎盤とは赤ちゃんの成長に不可欠な子宮内にできる器官のこと。へその緒と呼ばれる血管の束でママのからだと繋がっています。
胎盤を通して酸素をもらうので、まだ肺呼吸ではないのですが、超音波検査では呼吸をしているかのような動きをみられることがあります。羊水を飲み込んだり吐きだしたりすることで、将来の呼吸の練習をしていると考えられています。
妊娠16週:赤ちゃんの発達は?
腕や脚ができあがり、関節も動くようになりました。おなかの赤ちゃんの機能は生まれた後と同じような働きを始めています。骨が丈夫になり筋肉もついてくるので、動きが活発になり、羊水の中を動き回ることも。早い人は、おなかの中がごにょごにょと動いているような感覚の胎動を感じることがあるかもしれません。
妊娠16週:妊婦さんのからだは?
妊娠16週:妊婦さんのからだの様子は?
赤ちゃんの成長に欠かせない胎盤が完成する頃です。赤ちゃんへ酸素や栄養を送ったり、不要な老廃物を受け取ったりする役割を胎盤が担ってくれるので、ママのからだの負担が減ってきます。
つわりをはじめとした不調が落ち着き、快適に過ごせる日が増えていきます。食欲が増すので体重増加と栄養バランスに気を配るようにしてください。ホルモンの影響で皮下脂肪を蓄えやすくなっています。食べ過ぎには注意しましょう。
妊娠16週:妊婦さんのおなかの大きさは?
子宮の大きさが大人の頭ぐらいのサイズになり、子宮の上部がおへそのあたりに達するので、おなかのふくらみが目立ち始めます。乳腺が発達してバストサイズもUP。ふっくらと丸みを帯びた妊婦さんらしい体型に近づき、妊娠に気づかれるようになってきます。
妊娠16週:妊婦さんが気をつけること・やることは?
動悸や息切れを感じることも
胎盤や赤ちゃんに栄養や酸素を送るために少しずつ血液量が増えていきます。妊娠20週の頃には妊娠前と比べて3~4割増になるといわれ、増えた血液を全身に送り出すために、心拍数も大幅に増えます。子宮が大きくなると横隔膜が持ち上げられ、肺を圧迫するので、呼吸が浅くなり、息苦しさを感じることも出てきます。
動悸や息苦しさは妊娠によるからだの変化に伴うものなので病気ではありませんが、心臓への負担を減らすためにもゆっくりと動くよう心がけてください。体重の増えすぎも心臓の負担が増すので、適切な体重管理で予防するようにしましょう。
また、貧血も動悸の一因になります。妊娠中は血液量が増えることで血液が薄まった状態になり、鉄分不足に陥りがちです。レバーやしじみ、あさり、ほうれん草、小松菜などの鉄分を多く含む食材を積極的に摂るようにしてください。医師に鉄剤を処方してもらう相談をしたり、赤血球の生産を助ける働きがある葉酸を摂ったりするのも良いでしょう。
「戌(いぬ)の日」のお参り
妊娠5カ月の最初の「戌の日」に安産祈願をする日本独自の風習があります。これまで無事に過ごせたことに感謝し、これからの妊婦さんと赤ちゃんの無事を祈願する習わしです。「戌の日」とは十二支の「戌」が割り振られている日で、12日に1回めぐってきます。月ごとに日が違うのでカレンダーで確認するといいでしょう。ただし安産祈願で有名な神社は戌の日にはとても混雑するので、無理のない計画を。おなかに巻く「腹帯」は神社で用意してくれるのか、持参するのかは、場所によるので事前に確認しておくと良いでしょう。
なお、戌の日のお参りはお宮参りや七五三のような習わしのひとつなので、行わなくても気に病むことはありませんし、戌の日当日にこだわる必要もありません。体調にあわせて検討してください。
適度な運動でマイナートラブルの予防を
妊娠中に適度な運動を続けることは、さまざまな面でメリットがあると言われています。体力勝負でもあるお産に向けた体づくりになりますし、筋力がつくことで腰痛予防にもなります。これからますますおなかが大きくなり、からだのさまざまな場所に負担がかかってきます。体調が安定している妊婦さんは、動きやすいこの時期に筋力アップして、マイナートラブルの予防に努めてください。もちろんドクターストップがかかっていたり、体調がすぐれなかったりするときはNG。負荷をかけすぎたり、頑張りすぎにも注意してください。
眠りづらいときは横向き寝を試して
おなかが大きくなってくると眠る姿勢にも工夫が必要です。妊娠前と同じつもりで仰向けに寝ると気分が悪くなることもあるので、横向きで快適に眠れる姿勢を探してみてください。横向き寝に慣れていない人は抱き枕を抱く、ひざの間にクッションを挟むなどすると少し楽になるでしょう。その際、左側を下にすると、胃の逆流が起きづらい上に、体の右側にある太い静脈の血液も妨げません。
めまいや立ちくらみに注意を
急に立ち上がったり姿勢を変えたりした時に、めまいや立ちくらみが起こりやすくなります。自律神経の働きで血液が送られるのですが、赤ちゃんにも血液を送っている妊娠中は、その反応が少し遅れてしまい、立ちくらみを引き起こすのです。姿勢を変える時はゆっくりと、転倒防止のために立ち上がるときは床や壁に手をつく習慣をつけておくといいでしょう。脱水状態もめまいを引き起こしやすいので、水分不足にならないよう心がけてください。
妊娠16週のチェックリスト
赤ちゃんの性別
赤ちゃんの外性器が形成され、男の子の場合は妊娠15~16週頃には妊婦健診の超音波検査で性別を判断できるようになります。ただしまだ成長が十分ではないのと、赤ちゃんの体勢によっては判断がつかないこともあるので、確定するのはもう少し先の妊娠20週頃です。
性別がはっきりとわかったら、パートナーや家族、友人へ楽しく報告する「ジェンダーリビール」を企画する妊婦さんもいます。男女どちらかにちなんだ中身が入った風船やケーキを準備してパートナーに割ってもらうことで、サプライズ的に性別を発表するイベントです。妊娠中の思い出づくりのひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。
腹帯のこと
「戌の日」のお参りやお祝いで、さらしの腹帯をいただくことがあるかもしれません。長い帯をおなかにきれいに巻くのはコツが必要ですが、お祝いの品としてしまっておかず、普段から巻いて使うのも良いでしょう。自分のおなかの形や好みの締めつけ加減で巻けるので、腹巻やパンツタイプなどより「さらしが一番好み」という妊婦さんもいます。動いたときの適度な安定感や、大きなおなかをあたたかく包んで守ってくれる安心感がいいようです。
なお、腰痛が気になって腰への負担を和らげたい場合は、骨盤ベルトや産前リハビリテーションが効果的だと言われています。
食生活の見直し
つわりが落ち着き、食べられるものが増えてきたら食生活を見直すチャンスです。妊娠中はもちろん、出産、産後の育児中もママの健康は赤ちゃんにとって大切な要素となります。栄養バランスのとれた規則正しい食事を心がけて、健康的な体づくりを意識してください。食べるものに気を配ることで、出産のリスクを高める体重の増えすぎも防げるでしょう。
子宮頚管無力症とは
流産や早産の原因のひとつに「子宮頚管無力症」という病気があります。分娩時までしっかり閉じている子宮口が、開いてはいけない時期に開いてしまう病気です。自覚症状がないので、多くの産婦人科では妊娠20~24週で経腟超音波による子宮口のチェックと胎盤の位置確認をします。早期にみつかった場合は子宮頚管を縛る手術をして流産や早産を予防できる場合もあります。
同僚や友人への報告
妊娠が安定してきたら、同僚や友人への妊娠報告を考え始める頃でしょう。妊娠自体はとてもおめでたいことですが、場合によっては相手を傷つけたり、トラブルの元になってしまうこともあります。パートナーと一緒にいつ誰にどのように報告するか決めるなどして、落ち着いた状況で伝えるといいかもしれません。
おなかの小さな動きを感じたら
おなかの赤ちゃんの動きが活発になり、早い人はそろそろ胎動を感じることができるようになります。「腸が動く」「おなかがピクピクする」ような小さな動きを感じたら、もしかしたらそれは胎動かもしれません。
妊娠16週:パパにできることは?
妊娠が安定する「安定期」と言われる時期に入りますが、息苦しさを感じたり、めまいがあったりと、妊婦さんのからだは妊娠前のようにはいきません。一緒にでかけるときは無理なく、休憩を取りながら楽しみましょう。
妊娠16週: お医者さんに聞くことは?
体重の増え方の目安を確認しておく
食欲が戻り、体重管理を心がけたい時期。自分の適正体重がどれくらいか、次の健診までの増加目安などを確認しましょう。自宅でもこまめに体重をはかり、増加目安から大きくはずれないよう注意して。
性別をきいてみる
そろそろ赤ちゃんの性別がわかるかもしれません。ただし産院によっては一切伝えない方針だったり、他に気がかりなことを調べるために超音波検査に時間を割いていたりする場合もあります。産院の方針を確認して、頃合いをみて聞いてみるようにしましょう。
遠出を計画していたら
帰省などで遠出する計画をたてているときは、事前に医師に相談してください。長時間乗り物に乗る、産院から遠く離れる等の場合は、緊急時の対応についても確認しておくといいでしょう。
妊娠16週:よくある質問
妊娠16週での流産の恐れはどれくらいありますか?
流産全体の約8割は妊娠12週未満に起こると言われ、それに比べると妊娠16週は流産の恐れが減っています。ただし子宮の出口がゆるむ病気や、感染症、不育症など母体が原因の流産リスクは常にあります。過労やストレスを避け、感染症にも注意して過ごしましょう。
妊娠16週で性別はわかりますか?
赤ちゃんの外性器が形成され、超音波検査でも性別がわかり始める頃です。ただし女の子の場合はまだわかりづらいうえ、男の子の外性器も未発達なので、確定するのはもう少し先でしょう。
妊娠16週のおなかの大きさはどれくらいですか?
子宮の上部がおへその上のあたりにまで達するので、ふっくらとおなかがふくらんできます。しかし個人差も大きいので、まだほとんど目立たないことも、すでに大きくふくらんでいることもあります。妊娠経験がある経産婦さんの場合は、早くからおなかが大きく目立つことが多いようです。
妊娠16週です。体重増加の目安はどれくらい?
妊娠16週頃の体重増加の目安は、週に300~500g程度。妊娠前からの体重増加でいうと、BMI(妊娠前の体重/kg÷身長/m÷身長/m)が18.5未満の【痩せ体型】の人は、妊娠前の体重+2.5~5㎏。BMI が18.5以上25.0未満の【標準体型】の人は+1~3㎏。BMIが25以上30未満の【肥満体型】の人は-1~+1.5㎏が目安となります。(BMIが30以上は個別相談)