妊娠15週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子


井畑穣 先生
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
母体保護法指定医
日本婦人科腫瘍学会認定 婦人科腫瘍専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠15週に知っておきたい大切なポイントは?
赤ちゃんの発育に欠かせない胎盤の基本構造がほぼ完成し、妊婦さんの負担が減ってきました。つわりもおちつき、元気を取り戻す人が増えてくる頃でしょう。今後、おなかが大きくなるにつれ身動きがとりづらくなるので、パートナーとの思い出づくりなどを計画して、この時期を前向きに楽しめるといいですね。そんな妊娠15週の様子や気をつけたいことなどをお届けします。
妊娠15週は妊娠何カ月?
妊娠12~15週にあたる妊娠4カ月の最後の週です。妊娠の基盤を整える妊娠初期が終わり、次週からは体調や状態が一番落ち着くと言われる「妊娠中期」にあたる妊娠5カ月に入ります。
妊娠15週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠15週:赤ちゃんの大きさは?
頭からおしりまでの長さは10cm程度になりました。重さは100g程度です。
妊娠15週:赤ちゃんの様子は?
皮膚はまだうすく、毛細血管が透けてみえます。肌は赤っぽい肌色をしていて、これから厚みを増し、透明さが消えていくようになります。手足の爪もつくられていて、指には指紋らしきものも見えるようになっていきます。内臓や手足など器官の形成がほぼ終わり、今後は骨や筋肉が発達していきます。
妊娠15週:赤ちゃんの発達は?
からだの器官はほぼできあがっています。これから大脳半球の発育が進み、しゃべったり考えたりするときに働く部分が発達。頭蓋骨の骨化も進んでいて、頭と首がますますまっすぐになっていきます。
妊娠15週:妊婦さんのからだは?
妊娠15週:妊婦さんのからだの様子は?
つわりがおさまり快適に過ごせる日が増えていきます。赤ちゃんに栄養を届け、老廃物を受け取る胎盤がほぼ完成し、初期流産のリスクも減少。妊娠によって大きく変化したホルモンバランスも安定し、体調が落ち着いてくるでしょう。
胎盤が完成することで、ママが摂った栄養がこれからぐんぐん大きくなる赤ちゃんの糧となります。食欲が戻ったら栄養バランスのとれた食事を心がけてください。ただし出産のリスクをあげる体重の増えすぎには注意を。
妊娠15週:妊婦さんのおなかの大きさは?
子宮は、直径10~15cmほどの子どもの頭くらいのサイズになり、おなかが少しふくらみ始める頃です。これからどんどん大きくなるので、マタニティショーツに変えてもいい頃でしょう。おなかをすっぽり覆える、股上が深いタイプが一般的。おなかに負担をかけずに履けて、冷えからも守ってくれます。
妊娠15週:妊婦さんが気をつけること・することは?
パートナーと思い出づくりをしよう
流産の確率が高い時期が過ぎ、体調も落ち着く妊娠15週頃は、パートナーや家族との思い出づくりにいい頃合いです。赤ちゃんが生まれたら、お出かけは赤ちゃんが中心になるため、大人だけでしか行けない場所、できないことを楽しむといい思い出になるでしょう。例えば映画館や美術館、コンサート、子連れでは入りにくいレストランなど。その際、移動時間は短めにして、休憩をはさめる余裕のあるスケジュールを組むようにして。
[持ちものリスト]
□母子健康手帳
□健康保険証(マイナンバーカード)
□診察券
□かかりつけ医の連絡先
>緊急時に妊婦さん以外の人が見ても分かる状態に
□ナプキン
>もしもの破水や出血のために
など
[注意点]
□スケジュールはゆったりと、休憩をとりながら
□移動時間は短め。からだへの負担が少ない交通手段で
□緊急時に受診できそうな移動先の病院を確認
宿泊や長距離移動を伴う旅行を計画している時は事前に医師に確認を。行先や宿泊日数、交通手段によっては注意を促される場合があります。移動時間が長く、もしものときの対応が難しい海外旅行は基本的にNGです。
お酒はたとえ1杯でも我慢して
妊娠中に絶対にやめてほしいのが、お酒。赤ちゃんの脳の発育を妨げる「胎児性アルコール症候群」のリスクを高めてしまいます。お酒好きな人は食欲が戻ると、1杯くらい…と手を伸ばしたくなるかもしれませんが、ぐっと我慢を。ノンアルコール飲料もたくさん種類が出ているので、気分転換したいときは活用してみてください。ただし、ノンアルコール飲料の定義は「アルコール度数1%未満」なので、なかには微量のアルコールが含まれているものがあります。「アルコール度数0.00%」のものを選ぶようにして。
なお、料理に使う料理酒やワインは、加熱することでアルコール成分がとぶので影響はないでしょう。
妊婦健診は休まずに受診を
流産のリスクが下がる妊娠4カ月は妊婦健診が4週間に一度になるところが多い頃です。妊婦健診では週数に合わせてその都度、異なる検査やアドバイスをしています。体調が安定して順調だと感じていても、自覚症状がないまま進行している病気やリスクがあるかもしれません。決められたタイミングで必ず受診するようにしてください。つわりや体調不良でつらいときも自己判断でパスせず、電話などで相談するようにしましょう。
なお、妊婦健診の日ではなくても、異変を感じた時は電話相談や受診をしてもOK。普段の生活のなかで赤ちゃんやからだの異変に気づけるのはママだけなので、遠慮せず相談するようにしてください。
膀胱炎に注意
免疫力が低下する妊娠中は感染症にかかりやすい時期。膀胱炎もそのひとつです。膀胱炎は尿道が短い女性がかかりやすく、ストレスなどで免疫力が落ちている時に発症しやすい病気。妊娠中は子宮が膀胱を圧迫することで尿意の感じ方に変化があり、頻尿や残尿感に悩まされることが多くあります。5~10分おきにトイレに行きたくなったり、排尿痛や下腹部痛があるときは、膀胱炎の疑いがあるので、産婦人科の医師に相談するようにしてください。膀胱炎が悪化すると、流産につながる恐れもある腎盂腎炎を発症することもあります。
妊娠線ケア
これからぐっとおなかが大きくなるので、そろそろ本格的に妊娠線ケアをはじめましょう。妊娠線とは急激に皮膚が伸びることで肌に亀裂が生じて入る、ひび割れたような線のこと。ホルモンバランスの変化によって妊娠中は肌が乾燥しやすくなっているので、特に妊娠線ができやすい環境になっています。
おなかだけではなく、バスト、お尻、内ももなど、脂肪がつきやすいところが妊娠線のできやすい場所。肌の乾燥を防ぐことが重要なので、クリームを塗ってしっかり保湿する習慣をつけて。塗りながらおなかやお尻をマッサージして皮膚をやわらかくするのも、予防策のひとつです。
妊娠15週のチェックリスト
産休、育休計画をたてはじめよう
産休や育休に入る予定の妊婦さんは、あと5カ月ほどで仕事を引き継ぐことになります。おなかがふくらみはじめて見た目でも妊娠がわかるようになりますが、仕事への影響がでる人には自分から報告しておいたほうが良い頃合いです。職場の上司とも誰に何の仕事を引き継ぐか、具体的な計画をたてはじめるといいでしょう。
体調によっては急にお休みすることもあるので、可能な範囲で早めに引継ぎを進めておくのもおすすめです。
子育てと仕事の両立は、ママが頑張ることだけではどうにもならない部分があります。パートナーとの連携や両親等のサポート、職場の理解など、周囲の人とも相談しながら、産前産後の働き方について考えていけるといいですね。
マタニティウェアの準備
おなかがふくらみ、バストもサイズアップしはじめる妊娠15週頃は下着だけではなく、服もマタニティ仕様への変えどきです。特にスカートやパンツなどのボトムスは、おなかの締めつけが苦しくなる前にマタニティ専用のものを準備するといいでしょう。レギンスやデニム、タイツなどさまざまなタイプが揃っています。トップスはゆったりめの、重ね着で体温調整できるスタイルがおすすめです。
血流が悪くなる「冷え」は厳禁。首元にはスカーフを巻くなどして、夏でも冷房対策を欠かさないようにしてください。
足元は転倒しないよう履きなれたローヒールのものを。タイツやレッグウォーマー、ソックスで足首の冷えにも気をつけて。
ゆったりしたマタニティウェアは産後の授乳期にも活躍してくれます。胸元が開くタイプだと、授乳もしやすいでしょう。赤ちゃんのお世話で寝たり起きたりを繰り返す産後すぐに着ていても心地よく、洗濯しやすい素材だと、なお活躍の幅が広がるでしょう。
筋力づくりをはじめる
妊娠経過が順調で医師のOKがもらえたら、運動をしてお産にむけた体づくりをはじめてみて。妊婦さんに人気のマタニティヨガは、お産に役立つ筋肉を鍛えられるうえ、呼吸法やリラックスの練習にもなります。また、筋力がつくと、腰痛や背中の痛みが緩和されたり、足のむくみや尿漏れなどマイナートラブルの予防にもつながります。ただし重い道具を使ったトレーニングや激しい動きは避けてください。
戌の日のお参り計画をたてる
妊娠5カ月の最初の「戌の日」に安産祈願をする風習があります。「戌の日」とは12日に一度巡ってくる日。カレンダーで日にちを確認して、計画をたてるのもいいでしょう。ただし必ず行わなければならないものではないですし、戌の日当日にこだわる必要もないので、体調や都合にあわせて柔軟に対応するようにしてください。
妊娠15週:パパにできることは?
妊娠中の思い出づくりをするのにいい時期です。産後は赤ちゃん中心の生活になるので、夫婦ふたりの時間を楽しんで。子連れでは行きにくいレストランで食事を楽しんだり、大人向けの映画を見たり。マタニティフォトの予定をたてるのもいいかもしれません。ただし妊婦さんの体調ファーストで計画をたてるようにしてください。
妊娠15週: お医者さんに聞くことは?
摂りすぎに注意が必要な食材
つわりが落ち着いて食べられるものが増えると気をつけたいのが、食材選び。なかには赤ちゃんの発育に影響を与える物質を含む食材があります。例えばキンメダイやめかじきに含まれる水銀は赤ちゃんの中枢神経に悪影響を及ぼす恐れがあったり、昆布に多く含まれるヨウ素には甲状腺の機能低下を招く恐れがあったり。いずれも摂りすぎなければ問題ないことがほとんどですが、心配な人は確認してみるといいでしょう。
運動について
運動をはじめたい人はその旨を伝えてみましょう。体調は問題なくても経過によっては注意が必要な場合があります。運動の種類や負荷にもよるので、やろうと思っている運動があれば、具体的な例をあげて聞いてみるといいでしょう。
受診の目安について
妊娠15週は妊婦健診が4週間に一度になっていることが多い頃。流産の確率が高い時期を過ぎているとはいえ、リスクは常にあります。おなかの張りや出血、痛みなど、緊急受診の目安となる症状を事前に確認しておくと、もしものときに安心です。
妊娠15週:よくある質問
妊娠15週でつわりが終わらないことはありますか?
つわりは妊娠12~16週頃まで続くことが多いため、妊娠15週でまだ症状がおさまっていなくても心配することはありません。つわりが始まる時期が人それぞれのように、終わる時期にも個人差があります。さらに子宮が大きくなることで胃腸が圧迫されて、つわりのような不快さを感じることもあります。なかにはある日急に霧が晴れたように不快な症状が消えることも。ピークの時期は過ぎている人がほとんどなので、工夫して乗り切ってください。
妊娠15週のエコー検査でダウン症はわかりますか?
赤ちゃんに染色体異常がある場合、超音波検査(エコー検査)で染色体異常の場合に特有の身体的な特徴を確認できることがあります。ただし、赤ちゃんの向きや角度によっては確認が難しいことも多く、原則としてエコー検査だけではダウン症の確定診断はできません。
最近ではNIPT(新型出生前診断)が一般的になり、妊婦さんの採血だけで染色体異常を調べることができるようになりました。NIPTと呼ばれる検査は二つに区別することができます。大学病院や総合周産期センターなどで行われるものと、個人のクリニックで行われるもの。施行前に夫婦のカウンセリングを必須にしていてやや高額なものと、カウンセリング不要で低額なもの。低額なもののなかには結果だけ伝えてその後の対応について一切の説明がない施設もあるようで、トラブルになっているケースもあります。また、検査の信頼性について、公的な担保がないものもあります。
NIPTで陽性だった場合でも、妊婦さんのおなかから羊水を採取して、羊水中の赤ちゃんの細胞を直接調べる「羊水検査」をしなければ確定診断はできません。しかし羊水検査が原因となる流産が300分の1くらいの確率で起こるといわれています。つまり遺伝子異常がまったくない場合でも、赤ちゃんに流産のリスクを負わせることになってしまいます。また、遺伝子異常を治療する方法はないため、確定した場合の対応も考えなければいけません。NIPTを希望する場合は、病院できちんと説明を受け、パートナーともよく話し合って慎重に判断しましょう。
妊娠15週です。おなかはどれくらい出ますか?
子宮は直径10~15cmくらいのサイズになり、下腹部がなんとなくふくらんできます。おなかを見て他人が妊娠に気づくのはまだ先になりそうですが、下着の締めつけが気になりはじめる人もいるでしょう。乳腺が発達してバストサイズも大きくなるので、ゆったりしたマタニティ仕様の服への切り替えどきです。