妊娠13週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子


井畑穣 先生
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
母体保護法指定医
日本婦人科腫瘍学会認定 婦人科腫瘍専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠13週に知っておきたい大切なポイントは?
つわりが終わる頃と同じくして、胎盤が完成に近づき妊娠の状態が落ち着いてきます。大切な器官を作り終えた赤ちゃんはこれから骨や筋肉、からだを作るために、ママから届く栄養をどんどん吸収していきます。しっかり赤ちゃんを育むために、体調が落ち着いたら、食事にも気を配りながら健康的な生活を送るようにしてください。そんな妊娠13週の様子や知っておきたいことをご紹介します。
妊娠13週は妊娠何カ月?
妊娠12~15週にあたる妊娠4カ月の第2週です。流産の確率が高い、ひとつの壁ともいえる「妊娠12週未満」の時期から1週間たちました。子宮では胎盤が完成しつつあり、これから赤ちゃんがぐんぐん大きくなっていきます。
妊娠13週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠13週:赤ちゃんの大きさは?
赤ちゃんの大きさは7cm程度。広い子宮のなかを動き回れる大きさです。
妊娠13週:赤ちゃんの様子は?
羊水のなかをふわふわと遊泳しています。今の赤ちゃんにとって子宮のなかは広くてスペースに余裕があり、飛んだり跳ねたり、自由に動き回れる場所。口をパクパクさせて羊水を飲み込んだり、あくびをしたりする様子もみられます。
歯茎の下には乳歯の元となる「歯の芽」が造られ始め、器官や食道も現れます。呼吸や吸い込んだりする動きもできるようになります。
妊娠13週:赤ちゃんの発達は?
男女の外性器ができてきました。でもまだ小さいので、超音波検査ではっきりと性別の見分けがつくのはもう少し先、早くても妊娠15~16週頃です。女の子の場合はさらに先になるので、医師にたずねるのはもう少し待って。尿道はもうできているので、おしっこをする様子が見られます。赤ちゃんが排出した老廃物はママの血液をとおして、ママの腎臓に送られます。
妊娠13週:妊婦さんのからだは?
妊娠13週:妊婦さんのからだの様子は?
赤ちゃんの成長に欠かせない胎盤がほぼ完成しています。今後は赤ちゃんに栄養や酸素を届け、老廃物を受け取る役割を胎盤が担ってくれるので、ママのからだは少しずつ楽になるでしょう。胎盤は赤ちゃんが産まれた後、子宮から剥がれてからだの外に出てきます。赤ちゃんが生まれる前に剥がれそうになったり、何らかの原因で胎盤の機能が低下したりした場合は赤ちゃんがとても危険な状態になるほど、大事な役割を果たす組織です。
妊娠13週:妊婦さんのおなかの大きさは?
少しずつふくらみ始めますが、まだ他の人が気づくほどではありません。ただし、経産婦の場合は、子宮やおなかの筋肉ののびがよく、早い時期からおなかが目立つことが多いようです。
妊娠13週:妊婦さんが気をつけること・することは?
適正体重を把握しておこう
食欲が戻ったら、つわりで体重が落ちた人や、食べる物に偏りがあった人はしっかり食事をとることが重要ですが、体重の増えすぎには注意が必要です。妊娠中は赤ちゃんに栄養を届けるために、皮下脂肪をためやすい体質になっています。体重の増えすぎは出産のリスクをあげるので、体重増加の適正値を把握して、きちんと管理するようにしてください。出産までの適正な増加量は妊娠前の体型(BMI)によって異なります。
BMI=(妊娠前の体重/ kg)÷(身長/m)÷(身長/m)
・【痩せ体型/18.5未満】増加の目安は+12~15kg。
・【標準体型/18.5以上25.0未満】増加の目安は+10~13kg
・【肥満体型/25.0以上30.0未満】増加の目安は+7~10kg
※BMIが30以上は個別相談
熱っぽさが消え、冷えに注意
妊娠3週頃から続いていた基礎体温の高温期がそろそろ終わります。基礎体温とは、朝目覚めた直後に安静な状態で測る体温のこと。0.5度程度のわずかな差ですが、ずっと続いていた熱っぽさは感じなくなるでしょう。
そうすると注意したいのが「冷え」です。赤ちゃんに栄養や酸素を運ぶ血流が滞らないよう、からだを冷やさないように注意してください。
冷えが原因で、肩こりや足のむくみ、便秘などを引き起こすことも。あたためることで子宮の収縮がスムーズになって安産にもつながるので、季節を問わず、冷え対策をしてすごしてください。特におなかは冷やさないように、マタニティショーツや妊婦帯などを着用するといいでしょう。
マタニティ下着を準備しよう
これから大きくなるおなかや乳房を締めつけないよう、マタニティ下着の準備をしましょう。マタニティブラは授乳用として産後まで使えるタイプが人気ですが、いずれにしろ期間限定で使用するもの。少しでも早めに買って長く使うのがおすすめです。
おっぱいが敏感に
妊娠するとエストロゲンやプロゲステロンというホルモンが増え、母乳を作る乳腺を発達させます。さらにからだ全体の血流が増えるのと、サイズアップに伴い皮膚が薄くなるので、乳首や乳輪が敏感になることがあります。乳腺の発達は妊娠初期の頃から進んでいて、妊娠13週頃になるとバストサイズが大きくなっていることに気づくかもしれません。肌あたりがやさしい素材の、サイズアップにも対応できるマタニティ用のブラを準備するといいでしょう。
乾燥するとかゆみや妊娠線の原因になるので、乳房もしっかり保湿ケアを。その際、香料などが入っていないマタニティ専用材がおすすめです。
ただし乳頭への刺激は子宮の収縮を引き起こす恐れがあるので、なるべく控えてください。
マタハラ行為をうけたら
職場が妊娠や出産を理由に退職や雇用形態の変更を促したり、仕事の調整を断ったりすることは法律違反です。男女雇用機会均等法では、妊婦さんが医師から指導を受けた場合、その指導を守るために通勤の緩和、休憩、作業の軽減など、必要な措置をとらなければならないと定めています。また、産休・育休は労働基準法、育児介護休業法で定められた制度で、条件を満たせばだれでも取得できます。
これまでに前例がない職場など、妊娠を理由に不当な扱いをするマタニティハラスメント(マタハラ)をうける人が多くいます。もし職場が産休・育休中に給与を支払うことを損だと感じているようなら、会社の負担はゼロであることを伝えてもいいかもしれません。産前産後に休んでいる間に妊婦さんに支払われるお金は、健康保険や雇用保険からでますし、その間は妊婦さんの社会保険料の会社負担分も免除されます。職場に掛け合うことには勇気がいりますが、まずは妊婦さん自身が知識を得ることからはじめてみてください。
もし直属の上司が無理解だった場合は、さらに上の管理職や人事、労働組合などに相談するのもひとつの手段です。
妊娠12週以降の後期切迫流産について
流産になりかけている状態を「切迫流産」といいます。妊娠11週までの早期切迫流産と、妊娠12週以降では、原因や発生頻度が大きく異なります。受精卵の染色体異常など胎児側に要因がある場合が多い早期切迫流産と違い、妊娠12週以降の後期切迫流産は母体側に原因があることが増えます。子宮口が早く開いてしまう病気や、子宮筋腫などの異常、感染症による子宮の炎症など。そのため早期よりも流産のリスクが高まりますが、早い段階で対応できれば流産を防げる可能性もあります。出血、おなかの張り・痛み、おりものの異常等がサインなので、異変を見逃さないように注意してください。
妊娠13週のチェックリスト
里帰り出産など、転院先を検討
出産する病院は決まりましたか。人気で予約がとりづらい病院もあるので、里帰り出産をする予定の人は早めに分娩予約をいれましょう。健診で通っている病院にも里帰り出産などで転院することを伝え、タイミングの相談を。里帰りの場合は、35週までの転院が目安です。
遠方で見学が難しく病院の雰囲気がわからない場合は、両親や地元の友人からの口コミ情報も集めてみて。出産スタイルや部屋の種類によって費用が高額になることもあるため、事前に確認しておきましょう。
出血したとき
妊娠中の出血は珍しいことではありませんが、注意が必要なものがあります。妊娠13週の頃におきやすい出血は、内診やセックスで腟に刺激を受けたことによるもの。子宮腟部のびらんや子宮粘膜の充血から、少量の出血が見られることがよくあります。また、痔やポリープなどで出血することもあります。いずれも、薄い茶色のような少量の出血で1~2度で止まるようならあまり心配はいりません。
しかし、色が赤く鮮やかで少量でも長く続く、出血量が徐々に増えている場合は注意が必要。さらに下腹部の痛みやおなかが張る感覚、発熱がある場合は、すぐに受診しましょう。
摂りたい栄養素をチェック
妊娠中に積極的に摂りたい栄養素のひとつが「カルシウム」です。赤ちゃんの骨や歯をつくるのに欠かせない栄養素で、足りないときは妊婦さんのからだに蓄積されたものから届けられます。さらに産後は母乳でも使われます。妊婦さん自身の骨粗鬆症のリスクを下げるためにも、カルシウムが多く含まれる乳製品や魚介類、大豆製品を積極的に摂るようにしましょう。毎朝牛乳を飲む、ヨーグルトを食べるなど、乳製品は習慣化して摂るようにするのもおすすめです。
妊娠13週:パパにできることは?
つわりが一段落して以前のように食事もとれるようになると、すっかり妊娠前に戻ったように感じるかもしれません。しかし、まだまだ不安定な時期です。これまでと変わらず十分な休息をとってもらい、家事や育児の分担を続け、パートナーへの心とからだのケアを忘れないようにしてください。
妊娠13週: お医者さんに聞くことは?
運動のはじめどき
つわりが落ち着いて元気になってくると、からだを動かしたくなる人もいるでしょう。妊娠中の適度な運動は安産にもつながります。しかしまだ胎盤が完成しきっておらず、安定した状態に入ってない妊婦さんもいるので、運動をはじめる際には念のため医師に相談を。運動の種類やからだへの負担具合など、なるべく具体的な話ができると、注意点もわかりやすいでしょう。
安定期の過ごし方
初期流産のリスクが高い時期が過ぎ、徐々に妊娠状態が落ち着いてきます。食欲が増したり、あちこちに出かけたくなったり。そんな油断しがちな時期に気をつけておきたいことなど、日常生活の注意点を確認しておくと良いでしょう。妊婦健診が4週間に一度になり期間が空くので、トラブルのサインなど健診以外での受診の目安も確認しておくと安心です。
摂りすぎに注意する食材
食欲が増す時期なので、避けた方がいい、摂りすぎない方がいい食材についても改めて確認を。生ものや貝類、ナチュラルチーズは感染症を発症しやすくなる、パセリや一部のハーブには子宮を収縮させやすい作用がある…など。摂取量によるものもあるので、気になる物がある際は、相談してみてください。
妊娠13週:よくある質問
妊娠13週で赤ちゃんの手足はどのように発達しますか?
手は発達し、親指を他の指と分けて使うこともできるようになっています。腕の長さも出生時のバランスに近づきつつあります。足はまだ短いままですが、そろそろキックや足の向きを変えたりできようになります。骨や筋肉が発達し、ますます動きが活発になる頃でしょう。
妊娠13週でおなかがピクピクしました。これは何でしょうか?
妊娠13週で感じるおなかの動きは、胎動かもしれません。多くの人が胎動を感じられるのは妊娠16~18週頃からですが、胎動を感じた経験がある経産婦さんなど、もっと前に気づく人もいます。もう少しすると赤ちゃんのしゃっくりを感じることもありますよ。
妊娠13週です。妊娠中にオーガズムを感じると胎児に影響は?
医学的には妊娠中のセックスが、妊娠経過や胎児に影響を及ぼすことはないといわれています。ただし乳頭への刺激やオーガズムを感じることによって子宮の収縮を引き起こし、流産へのリスクを高めることがあるので、おなかの張りや気分が悪くなった時はすぐに中止して。切迫流産の恐れがある人は医師からストップをかけられることもあります。
また妊娠13週に注意したい後期切迫流産は感染症が原因となる場合があります。妊娠中は免疫力が落ちていて菌による炎症が起こりやすいうえに、精液には子宮の収縮を起こす成分も含まれているので、必ずコンドームをつけるようにしてください。