妊娠40週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子


井畑穣 先生
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
母体保護法指定医
日本婦人科腫瘍学会認定 婦人科腫瘍専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠40週に知っておきたい大切なポイントは?
妊娠40週を迎えると陣痛の訪れを待ち遠しく感じているかもしれません。出産が予定日を過ぎてしまうことは珍しくありません。おなかの赤ちゃんと協力しながら進めていく分娩や産後の生活をイメージしながら、いずれ訪れるその瞬間を穏やかに待ちましょう。妊娠40週頃の赤ちゃん&妊婦さんの様子や気をつけておきたいアドバイスをお届けします。
妊娠40週は妊娠何カ月?
妊娠後期で妊娠36週以降にあたる妊娠10カ月の第5週です。出産予定日は妊娠40週0日となるため、妊娠40週に入るとすぐに予定日超過となりますが、正期産の時期は41週6日までとなるため、あまり心配ありません。
妊娠40週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠40週:赤ちゃんの大きさは?
妊娠40週頃の赤ちゃんの重さは約2,400g~3,840g。平均すると約3,100gで、小ぶりの大玉スイカと同じくらいの重さです。
妊娠40週:赤ちゃんの様子は?
おなかの外に出る日に備え、骨盤のなかに頭をおさめ、からだを丸めている赤ちゃん。身動きがあまりとれなくなっているので、胎動を感じることは少なくなっているかもしれません。
妊娠40週:赤ちゃんの発達は?
赤ちゃんの脂肪はさらに増してふっくらし、肌に張りを見せています。おなかの赤ちゃんの肌を保護するようについていた胎脂は少なくなっています。
妊娠40週:妊婦さんのからだは?
妊娠40週:妊婦さんのからだの様子は?
出産予定日を迎えた妊娠40週頃、胎児が下りてきて胃への圧迫が減り、食欲が増えてきているかもしれません。からだが重く運動量が減りがちなこともあり、安産のためにも体重の管理は最後まで気が抜かないようにして。
妊娠40週頃の体重の増加は、妊娠前のBMI が18.5未満の妊婦さんは+12~15kg、BMI 18.5~25未満の妊婦さんは+10kg~13kg、BMI 18.5~25以上の妊婦さんは+7kg~10kgが目安となります。
妊娠40週:妊婦さんのおなかの大きさは?
妊娠40週頃になると腹囲は100cm近くになっていることもあります。赤ちゃんのからだをおなかのうえから十分感じられるのではないでしょうか。子宮の大きさは35cm前後になりました。赤ちゃんが生まれた後、子宮は強い収縮などを行って、産後6~8週頃には妊娠前の大きさに戻ります。
妊娠40週:妊婦さんが気をつけること・することは?
お産を進める3つの要素
お産が進んでいくには重要な要素が3つあります。それが娩出力、胎児、産道で、これらすべてが働きあうことでお産が進むことになります。
・娩出力(べんしゅつりょく)…赤ちゃんをおなかの外に押し出す力。
強く繰り返す子宮の収縮(陣痛)、陣痛と胎児の動きに合わせてかける腹圧
・産道…赤ちゃんの通り道
軟産道(子宮頸管、膣、外陰部)の柔らかさや開き、骨産道(骨盤)の形やゆるみ
・胎児…赤ちゃんがおなかの中から出ようとする力。
外に出やすい赤ちゃんの体勢、骨盤や産道を下降するための回旋
ママの力と赤ちゃんの力が重なって、生まれる力になることがイメージできるでしょうか。強い陣痛は妊婦さんを辛くするものではなく、赤ちゃんと出会うために必要な力なのです。また、これらの中にお産を妨げるような問題があれば、医療処置を行うことが検討されます。
いきんではダメなタイミング
出産時に使う「いきみ」とは、赤ちゃんがおなかの外に出てくるために、強くなった陣痛の波にあわせて腹圧をかけることです。いきみを行うのは、子宮口が全開になり、分娩台にあがってから。医師や助産師さんが呼吸や陣痛のリズムを確認しながらリードしてくれるので、おなかのなかから赤ちゃんを押し出すイメージで、息を止めずに力をかけていきます。
子宮口が全開になる前、強い陣痛の波についいきみたくなってしまうのですが、その段階でいきんでしまうと、産道や会陰、胎児に強い負担をかけてしまうことになります。そのダメージを避けるために行うことが、「いきみ逃し」です。腰や肛門周辺を温める・テニスボールなどで押す、深呼吸をするなどして、いきみを逃しながら子宮口が全開になるまで過ごします。
赤ちゃんを引き出す医療処置
陣痛が進んではいるけれど、赤ちゃんがなかなか出てくることができず、母児の状態から早めに分娩をおこなったほうが良いと判断された場合、器具を用いて赤ちゃんを出してあげる医療処置、吸引分娩・鉗子分娩が行われます。
お椀状のカップを赤ちゃんの頭につけて引き出すようにするのが「吸引分娩」で、同時に母体のおなかの上を押すクリステレル胎児圧出法で介助することもあります。
鉗子という器具で赤ちゃんの頭をはさみ引き出す、「鉗子分娩」といわれる方法もあります。いずれの方法も直後には赤ちゃんの頭に跡が残りますが、しばらくすると消える場合がほとんどです。
妊娠41週6日までは正期産の時期
出産予定日を過ぎてしまうと、気持ちが焦ってしまうかもしれません。けれど、翌週の41週6日までは正産期と言われる時期。母体や赤ちゃんの状態に問題がないようであれば、心配する必要はないでしょう。妊婦健診を行い、このまま陣痛を待つか、医療処置を行うかは医師が判断するので、落ち着いて過ごすようにして。
兆候がないようなら、妊娠週数の確認も
妊娠40週であっても、まったく兆候がみられないようであれば、出産予定日の算出がズレていた可能性も考えられます。最終月経開始日を妊娠0週0日として、280日目の40週0日目を出産予定日と考えますが、一般的な生理周期を元に考えられているため、生理不順であるとズレが生じることがあります。そのため、妊娠3カ月頃の赤ちゃんの大きさをもとに、より正確な出産予定日を確認し直します。
妊娠40週のチェックリスト
赤ちゃんが生まれてから病院で行うこと
赤ちゃんが生まれてから退院するまでの数日間は、母体を回復させながら、赤ちゃんのお世話も行っていきます。分娩の時間帯によりますが、母体の状態をみながら、経腟分娩では翌日、帝王切開では2~3日後から赤ちゃんのお世話がはじまります。
抱っこ、おむつ替え、着替え、授乳やミルクなどを指導してもらいながら実際に行っていきます。赤ちゃんのからだを洗う沐浴指導は実際に行う場合と、見学の場合があります。最初はドキドキするかもしれませんが、不安や気になることがあればすぐ助産師さんに聞くことができるよい機会です。体調が優れない、体力が回復していないようであれば無理をせず相談するようにしましょう。
また、生まれてきた赤ちゃんは身長や体重を計測し、心拍や呼吸、黄疸などの確認をするほか、先天代謝異常等検査、新生児聴覚スクリーニング検査などを行っていきます。
緊急帝王切開となるのはどんなとき?
出産が進むなかで、母児の状態に危険を感じられるとき、経腟分娩から急遽帝王切開に切り替えることがあります。それが緊急帝王切開です。
赤ちゃんに何らかの問題があるか、問題が生じる可能性がある胎児機能不全、お産が進まない分娩停止、胎盤が子宮からはがれてしまう常位胎盤早期剥離など、すぐに分娩をしたほうが母児の健康を守ることにつながると判断されたときは緊急帝王切開が行われます。
出産予定日を過ぎたら産休はどうなる?
産前休業期間は出産予定日を含む6週間(多胎児は14週間)、産後休業期間は8週間と定められています。日数が決まっているため不安になるかもしれませんが、出産が予定日を過ぎた場合、その日数分、産前休業が期間延長となり、出産手当金も支給されます。産後休業期間に変更もありません。
産後休業に関しては、産後6週間が過ぎたのち、本人が希望し、医師が支障ないと認めた業務であれば、行うことも可能です。
退院してからの赤ちゃんとの生活
産後すぐの赤ちゃんは、おなかの外の生活に慣れるために練習をしている最中。浅い眠りが続き、おっぱいやミルクも少しずつしか飲むことができません。10回以上おしっこもします。泣くことでしか気持ちを伝えることができないので、しょっちゅう泣いているかもしれません。
最初は戸惑うかもしれませんが、パートナーと協力し合って赤ちゃんのお世話をしていくことで、いつしか親子ともに新しい生活に慣れていけるでしょう。
母体がもとの状態に戻るには約6~8週間かかる
長い妊娠期間を経て、出産という大仕事を終えたママのからだは、6~8週間をかけながら、徐々にもとに戻っていきます。この時期を「産褥期」といいます。悪露と呼ばれる出血が続いたり、おっぱいがうまく出なくて乳腺炎になったりなどのトラブルも起こりやすいので、ママはできるだけ無理をせずに過ごしたいもの。パートナーの力が必要なことはもちろんですが、自治体や民間などのサポートやサービスを活用して、からだを回復させていきましょう。
また、ホルモンバランスの変化でマタニティブルーにもなりやすい時期。一過性のものがほとんどですが、気分の落ち込みが続くようであれば相談を。
妊娠40週:パパにできることは?
赤ちゃんが生まれたら、赤ちゃんのお世話をしてたくさん触れ合うようにしていきましょう。ママと赤ちゃんの入院先へ行ったときには、抱っこするだけでなく、おむつ替えや着替え、ミルクなどにもトライしてみて。誰しも小さな赤ちゃんの最初のお世話は不安に感じるものです。それはきっとママも同じ。練習を重ねていくことで慣れていきますし、赤ちゃんもパパを身近な存在に感じることができるはずです。自宅に戻ってからは、ママのからだを労りながら、率先して赤ちゃんとの時間を過ごすようにしてください。
妊娠40週: お医者さんに聞くことは?
NST(ノンストレステスト)が苦しい
胎児の心拍や子宮収縮を確認するNST(ノンストレステスト)。検査時間が20~40分間と少し長く、また仰向けで受けることになるため、苦しくなったり、気持ち悪さを感じたりする妊婦さんもいるようです。じっとしていなければならない検査ですが、少し上半身を起こしたり、横向きにしたりするとラクになることがあるので、検査が辛いと感じるようであれば相談をしましょう。
正産期を過ぎたらどうなる?
正産期を過ぎた妊娠42週以降の状態を「過期妊娠」、妊娠42週以降の出産を「過期産」といいます。過期妊娠の時期となると、羊水の減少や胎盤機能の低下が考えられ、胎児のリスクが高くなっていきます。そのため妊娠42週となる前に、医師と相談をしながらその後の処置を決め、赤ちゃんの命を守っていきます。
無痛分娩から自然分娩に変更できる?
陣痛の痛みを軽減することができる無痛分娩。無痛分娩の申し込みをしていても、時間が経つにつれて気持ちに変化があって悩む妊婦さんもいるようです。もし自然分娩に変更したいと思うようであれば、相談をしてみましょう。
また、逆に、病院によっては出産直前でも自然分娩から無痛分娩に変更できるところもあるようです。気になるようであれば相談を。
妊娠40週:よくある質問
40週の何日で出産しますか?
妊娠40週0日が出産予定日となりますが、あくまでもそれは予定。一般的な生理の周期をもとに考えられており、実際の出産日は異なることがほとんどです。多くの赤ちゃんが妊娠37~41週の間に生まれており、この時期に出産すること正期産といいます。
妊娠40週で陣痛がこない
妊娠40週となっても陣痛がこないこともあります。妊婦健診でお産の進捗具合を確認し、問題がないようであれば陣痛を待ちます。ウォーキングや階段の上り下り、ストレッチ、母乳マッサージ、適温の入浴などは陣痛を促すといわれることも。体調に問題がないようであれば、取り組んでみてもいいでしょう。母児の状態によってはお産を促すための医療処置を行うこともあります。
妊娠40週を過ぎたら健診はどうなるの?
出産予定日を過ぎてからの健診は、胎児や母体の経過を確認する必要があるため、3~4日に1回行われることが多いでしょう。既定の妊婦健診の助成券を使い切ってしまっていても、妊娠40週を超過した妊婦健診に関しては、上限はあるものの追加の助成がある自治体もあるので確認をしておきましょう。