妊娠34週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子


井畑穣 先生
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
母体保護法指定医
日本婦人科腫瘍学会認定 婦人科腫瘍専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠34週に知っておきたい大切なポイントは?
妊娠34週となり、妊娠9カ月も半ばを過ぎました。臨月が近づいているので出産のサインや出産に関連する助成金などについても知っておきましょう。妊娠34週頃の赤ちゃん&妊婦さんの様子や気をつけておきたいアドバイスをお届けします。
妊娠34週は妊娠何カ月?
妊娠後期で妊娠32~35週にあたる妊娠9カ月の第3週です。出産予定日の6週間前となり、多くの働く妊婦さんが産休に入る時期となります。
妊娠34週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠34週:赤ちゃんの大きさは?
妊娠34週頃の赤ちゃんの重さは1,800g~2,650gになりました。個体差が開いてくる時期ですが、平均で2,000g前後まで大きく育ってきました。
妊娠34週:赤ちゃんの様子は?
子宮いっぱいになってきた赤ちゃんは、頭を下にした「頭位」に落ち着いてくる時期です。骨格はほぼ出来上がっていますが、生まれてくるときに産道を通りやすいよう、頭蓋骨の間には隙間がある状態です。
妊娠34週:赤ちゃんの発達は?
妊娠34週頃は肺の機能が完成する時期で、おなかの外に出たときに自力で呼吸ができるようになってきました。心臓や血管、リンパ管といった循環器もほとんど完成。生まれてくるその日に向けて、赤ちゃんは隅々までしっかりとからだを作っています。
妊娠34週:妊婦さんのからだは?
妊娠34週:妊婦さんのからだの様子は?
妊娠9カ月も後半となり、「産み月」とも言われる臨月が近づいてきました。妊婦さんのからだも出産の準備を進めていて、出産時にピークを迎えるエストロゲンやプロゲステロンといったホルモンの分泌もいっそう盛んになっています。おりものの量が増えたり、眠気や便秘などを強く感じたりすることがあるかもしれません。
妊娠34週:妊婦さんのおなかの大きさは?
胃や心臓、肺、膀胱など、からだの多くの場所が圧迫されるほど子宮は大きくなっています。大きなおなかを支えるために、背中、腰、足に負担がかかっているので、ゆっくりとした動作で、少しでも負担を減らせるように動きましょう。
妊娠34週:妊婦さんが気をつけること・することは?
下腹部にけいれんのようなものを感じる
全身にけいれんが起きているのではなく、おなかだけがまるでけいれんしているかのようにブルブルしているときは、心配の少ないふたつの理由が考えられます。ひとつは胎動。赤ちゃんの横隔膜が発達している過程でしゃっくりを繰り返していることがあります。
また、前駆陣痛ということも考えられます。不規則な間隔で軽い痛みを伴う前駆陣痛は、しばらく安静にしていると治まります。
便秘になりやすい
大きくなった子宮や赤ちゃんが腸を圧迫することに加え、プロゲステロンというホルモンの影響で腸の動きが鈍くなっていたり、運動量も減っていたりすることで、この時期は便秘に悩まされるかもしれません。予防のためにも、きのこや海藻類、根菜類などの食物繊維を含む食品、そして水分をしっかりと摂るようにします。また自律神経が乱れることも腸の動きを鈍化させてしまうので、ストレスをためないようにし、適度な運動を行うようにしましょう。それでも辛い場合は医師に相談を。便秘から痔にもなりやすいので、早めのうちの対処が大切です。
会陰マッサージについて確認
出産するとき、赤ちゃんが出てくるために大きく伸びる必要がある会陰。腟と肛門の間の部分で、伸びが足りない場合は裂けてしまったり、切開をしたりすることがあります。そのリスクを下げるための一つの方法が会陰マッサージ。必ず裂傷や切開が防げるというものではありませんが、会陰を柔らかく伸びやすくしておくとでリスクを下げられます。
妊娠34~37週頃から取り組むことが多く、植物性オイル(カレンデュラオイル、ホホバオイルなど)などを用いて、腟に圧をかける方法や、コットンでパックをする方法などがあります。産院や助産師から指導を受けられることもあります。
頻繁におなかの張りを感じる
妊娠34週頃は、おなかの張りが頻繁になってくる時期です。おなかの張りを感じたらゆったり休むようにして、無理はしないようにしましょう。休んでも治まらない、規則的な張りを感じるようであれば、早産の兆候ともいえるため、注意が必要です。
生活リズムを整える
臨月が近づき産休に入る妊婦さんが増えている頃です。いままでと生活リズムが変わりますが、規則正しい生活は母体や胎児の健康を維持するためにも大切なこと。休みに入って、できていなかった出産の準備などを一気に進めようとするとからだが疲れてしまうことがあるので、体調を確認しながら進めていきます。また、里帰りをしている妊婦さんは、実家の生活ペースとの兼ね合いを取れるように調整していきましょう。
妊娠34週のチェックリスト
出産のはじまり方を知っておこう
お産のはじまりにはサインがあります。出産が近づいてきたので、からだからのサインについても知っておきましょう。
いますぐにお産がはじまるのではなく、「お産が近づいてきましたよ」というサインが「おしるし」です。赤ちゃんと羊水を包む卵膜の一部が子宮の壁から剥がれて出血したことによるもので、鮮血ではなく、おりものと混じったピンク色や茶色っぽいこともあります。おしるしがあってから数日~1週間後ぐらいにお産がはじまることが多くあります。そのため慌てて産院に連絡をする必要はありませんが、出血に加えて強い下腹部の痛みや、下腹部が板のように固くなる場合は常位胎盤早期剥離の疑いがあるので至急、連絡を。
おしるしは1回だけでなく数回あることも、またおしるしがないまま陣痛が始まることもあります。
「まもなくお産がはじまる」という2つのサインが「陣痛」と「破水」です。
今までのおなかの張りとは異なり、規則的な強い痛みが起こったら陣痛と考えられます。痛みを規則的に感じるようになったら時間を計測しましょう。痛みを感じる時間は通常1分程度で、痛みが収まっている時間は、当初は不規則で10分以上になることもあります。痛みと痛みの間隔が10分ほどになったら本格的な陣痛のはじまりです。
陣痛がはじまる前に、卵膜が破れて羊水が出てくる「破水」が起こることもあります。尿やおりものくらいの量もあれば、一気に大量に出てくることも。破水があったら、細菌の感染を防ぐため、すぐに病院へ連絡しましょう。お風呂やシャワーは絶対にNGです。
予定帝王切開とは?
前回の出産が帝王切開の場合や、多胎妊娠、胎位異常(逆子など)、胎盤位置異常(前置胎盤など)、児頭骨盤不均衡、母体合併症などの場合は、経腟分娩が難しい状態であるため、帝王切開での出産となります。
あらかじめ手術日を決める帝王切開を予定帝王切開といい、陣痛が起こる前に手術を行うため、赤ちゃんや母体の状態を確認しながら、妊娠37~39週に手術の予定が立てられます。
出産で受け取れるお金について
妊婦健診の補助のように、妊娠や出産、子育てには自治体による公的な支援が充実しています。しかし助成金を受け取るには申請が必要なため、どんな手続きが必要なのかをしっかりと調べておいて。妊婦さんの就業状態(専業主婦、出産後も仕事を継続する、出産を機に退職する)や世帯所得、母児の状態などによって、受給の条件は様々。どの内容が自分にあてはまるのか、いつ頃までにどこに対してどんな手続きが必要なのかを確認しておきましょう。
<助成の例>
妊婦健診費の助成、産後健診費の助成、出産育児一時金、児童手当、未熟児医療費助成、乳幼児・子ども医療費助成、高額療養費、医療費控除(確定申告)、出産手当金、育児時短就業給付金 など
陣痛があったときの病院までのルート確認
陣痛や破水があった際にどのような方法で病院へ行くかを決めておきましょう。基本的に移動は家族の運転する車、またはタクシーで。例え安定していても急変する可能性があるため、自分で車の運転をしたり、近くても徒歩で移動したりすることは避けます。
また、タクシー利用になりそうな場合は、あらかじめ陣痛時や深夜でも利用できるタクシー会社を調べて、連絡先を控えておきましょう。また、地域によっては、陣痛タクシー(マタニティタクシー)という妊婦さんに配慮されたタクシーを利用できることも。
どんなタイミングでお産がはじまるかは予測できないため、パートナーがいるとき、自分ひとりのとき、自宅にいるとき、外出しているときなど、考えられるパターンを想定しておくと、出産のサインがあったときに落ち着いて対処できるでしょう。
妊娠34週:パパにできることは?
出産の進みや母児の状態にもよりますが、お産入院によってママは少なくとも1週間前後は不在となります。その期間、パパは自分で家のことをこなさなければなりません。また、退院後もママはからだをあまり動かせないため、パパの自発的な行動が必要となります。見逃しがちなのが、日用品置き場の確認や補充。ゴミ袋やトイレットペーパー、シャンプーや洗剤などの詰め替えなど…意外と分かっていない置き場があるかもしれません。また、産後はしばらく慌ただしい生活が続くので、あらかじめストックを補充しておくと安心です。
妊娠34週: お医者さんに聞くことは?
赤ちゃんの位置はどうなっていますか?
おなかの赤ちゃんは大きくなるにつれ、子宮のなかで身動きがとれなくなっていきます。以前逆子と指摘されていても、この頃までには「頭位」という頭が下になる位置に落ち着くことが多いので、気になる人は赤ちゃんの位置を確認してみてもいいでしょう。
また、逆子だった場合、この後頭位になる可能性はあるのか、いつ帝王切開の判断がされるのかの確認を。
だるくてすぐに疲れてしまう
妊娠34週頃はホルモンバランスの変化などから、だるさを感じやすくなっています。食事や運動、睡眠など生活習慣を見直してもあまり改善しないようであれば、重度の貧血や妊娠高血圧症候群の可能性もあります。ふらつきがひどい、むくみがひどいなどの症状もあるようであれば医師に相談をしておきましょう。
無痛分娩・和痛について
陣痛の痛みを緩和する無痛分娩・和痛分娩。申し込みをしていた妊婦さんはこの時期に、医師から麻酔などについての説明があります。麻酔の痛みや効き方など、気になることは確認をしておきます。また、病院によってはこの時期に申し込みを行えるところもあるので、陣痛に対して不安を感じているようであれば相談をしてみても。
妊娠34週:よくある質問
妊娠34週で出産するリスクは?
妊娠34週での出産は、まだ正期産ではなく早産の時期となります。妊娠34~36週は後期早産と呼ばれ、この時期に生まれた赤ちゃんを後期早産児といいます。肺の機能が成熟し、ある程度体重もあることから、34週未満に生まれた早産児と比べてリスクが軽くなると考えられています。しかし、まだ発達の途中にあるため、NICU(新生児集中治療室)での治療が必要となります。リスクが全くないというわけではありません。
妊娠34週の胎児は頭位ですか?
妊娠34週頃には赤ちゃんの頭の位置が下になる頭位となることがほとんどです。それ以前に骨盤位、いわゆる逆子の状態であっても、この時期に頭位となる赤ちゃんは90%以上で、妊娠36週頃には約95%となっています。頭位とならなかった赤ちゃんは、経腟分娩が難しいため、妊娠34~36週頃に帝王切開での出産となるかを決定していきます。
妊娠34週の過ごし方は?
おなかが大きく、バランスを崩しやすい妊娠34週頃は落ち着いてゆったりと過ごしましょう。適切な食事や睡眠、運動を心がけ、おなかの張りを感じたら安静にするようにして、無理なく過ごすことが大切です。
34週の胎児の平均体重は?
妊娠34週頃の胎児の平均体重は約2,150gです。赤ちゃんの重さに個体差が出てくる時期で、赤ちゃんの重さの目安は1,800g~2,650gと幅があります。さらに推定体重には誤差が±10%ほどあると考えられています。不安を感じるようでしたら、医師に相談を。