妊娠23週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子

河野照子 先生
医学博士
日本産科婦人科学会専門医
日本周産期・新生児医学会専門医
日本超音波医学会専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠23週に知っておきたい大切なポイントは?
妊娠23週は妊娠6カ月の最後の週。妊婦健診での超音波検査では画面の中に収まらないほど大きくなった赤ちゃんの様子が見られるようになり、胎動もますます感じられるようになってきます。大きくなっていくおなかは愛おしいものですが、妊娠線を気にする妊婦さんはケアについても考えていきたい時期です。
妊娠23週頃の赤ちゃん&妊婦さんの様子や気をつけておきたいアドバイスをお届けします。
妊娠23週は妊娠何カ月?
妊娠中期・妊娠6カ月の第4週です。おなかの状態は安定していてもマイナートラブルに悩まされることがしばしばあります。
妊娠23週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠23週:赤ちゃんの大きさは?
妊娠23週頃の赤ちゃんは約30cm、重さは500g~650gほどの大きさになりました。大きく育った赤ちゃんは超音波検査の画面の中に収まらないほどに。まだ小さいけれど、日に日に成長していく姿に嬉しさを感じることもあるでしょう。
妊娠23週:赤ちゃんの様子は?
筋肉や骨格の発達がさらに進み、動きがさらに強くなっていきます。上下のまぶたがわかれ、より赤ちゃんらしい顔立ちに。超音波検査で赤ちゃんと会えるのがますます楽しみになってきました。
妊娠23週:赤ちゃんの発達は?
妊娠23週頃の赤ちゃんは感覚器官の機能が発達を進めていきます。例えば、妊娠10週頃に形としてはできていた耳が次第に形成され、妊娠23週頃には聴覚が発達していきます。羊水を通じて妊婦さんのからだの中の音をはじめ、さまざまな音を聞く練習をしています。
妊娠23週:妊婦さんのからだは?
妊娠23週:妊婦さんのからだの様子は?
妊娠23週頃になると、からだや感覚が発達してきた赤ちゃんがさらに動くようになり、胎動がわかりやすい状態になってきます。日ごろからおなかに赤ちゃんの存在が感じられるようになると、愛おしさが増し、そして安心することができます。
貧血になりやすく、立ちくらみを起こしてしまうことも。血液量が増えることで動悸を感じる場合もあります。
妊娠23週:妊婦さんのおなかの大きさは?
妊娠23週頃になると、妊婦さんのおなかは前にせり出すようにしてさらに大きくなってきます。細菌感染などから赤ちゃんを守る羊水の量も500mlほどになり、おなかの重みをさらに感じるようになっているでしょう。
妊娠23週:妊婦さんが気をつけること・することは?
妊娠線のケアは早めにスタート
妊娠線とは妊娠中におなかなどにできる赤紫色の線のこと。出産後、徐々に色が薄く白くなっていきます。線状皮膚萎縮症(せんじょうひふいしゅくしょう)という皮膚の症状で、表皮の下にある真皮が急激な皮膚の伸びに対応しきれず断裂してしまい、皮膚の伸びに対して垂直に赤紫色の線状斑となって現れます。一度できてしまうとレーザー治療などで目立たなくすることは可能ですが、完全に消えることはありません。
妊娠線の予防や軽減には、早い時期からケアを始めるに越したことはありません。予防法としては、肌をやわらかく伸びやすくするよう、妊娠線ケアのクリームを塗って保湿したり、優しくマッサージすること。急に体重が増えておなかが急激に大きくなると妊娠線ができやすくなるため、皮膚の伸びをゆるやかにするためにも体重管理が大切です。
(妊娠線ができやすい場所)
おなか/胸/おしり/太もも/二の腕など
また、おへその上下に見られるようになる黒い縦線は妊娠線ではなく「正中線」と呼ばれるもの。実はもともと人体に存在している線なのですが、ホルモンバランスや皮膚の状態の変化で目立ってきます。妊娠線と異なり、正中線は出産後に薄くなり、その後目立たなくなります。
温泉は注意しながら、サウナや岩盤浴は控えて
妊娠中のイライラやストレス、むくみなどをお風呂に入って解消している妊婦さんも多くいることでしょう。けれど、温泉やサウナ、岩盤浴を妊娠前と同じように利用するのは避けてください。
日本にある温泉において泉質自体が妊娠に影響を及ぼすことはないようですが、なるべく熱いお湯は控え、ぬるめの温度で入浴するのがベスト。のぼせると転倒のリスクが高まるので気持ちよくても長湯をしすぎないように。また、鼻や肌が敏感になっているので硫黄泉など臭いや刺激が強い温泉、すべりやすいとろとろした泉質の温泉は注意が必要です。
温泉に入る前後にはしっかり水分をとり、気分が悪くなりそうなときは早めにあがるようにして。
サウナや岩盤浴は避けたほうが無難です。妊娠中は血流が多く代謝もよくなっていて多くの水分を必要としている状態であるため、サウナや岩盤浴などは普段よりも脱水症状になりやすくなります。急激な血圧の変化も考えられます。妊婦さんのからだはもちろん、赤ちゃんへの負担も考えられるため妊娠中は控えたほうがよいでしょう。
いつもと違う出血やおなかの張りを感じたら
おなかの張りや痛みが続いたり、出血が混じったようなおりものがあったり、性器にかゆみや痛みがあったりした場合は注意が必要です。妊娠中期は安定期といってもまったくリスクがないわけではありません。ストレスや感染症など、ちょっとしたことから切迫早産を引き起こすことがあります。普段と違う症状があり、安静にしても様子が変わらないようであれば早めに受診をし、適切な対応をしていきましょう。大切な赤ちゃんを守るために迅速な行動を心がけて。
めまいや動悸は妊娠による貧血が原因かも
赤ちゃんのからだを作るために栄養や酸素を運ぶ役割を果たす血液。赤ちゃんの発達がさらに進む妊娠中期では、血液量は増えますが、酸素を運ぶ赤血球はそれほど増えないため血液が薄まり、貧血になりやすいです。また、赤ちゃんが成長するのに必要な鉄も吸収されるため、鉄分不足になりやすくなっています。
貧血によって起こる症状には、疲れやすさ、めまい、たちくらみ、動悸、息切れ、頭痛などが挙げられます。
予防するためには赤血球を作るのに必要な鉄分やたんぱく質を多く含む食品を、毎日の食事に取り入れるといいでしょう。鉄の吸収を高めるビタミンCや正常な赤血球を作るのに必要なビタミンB群や葉酸も一緒に摂ると、なお良いです。貧血の状態によっては鉄剤などを処方されます。
(鉄分を多く含む食材)
・レバー
・牛肉
・カツオ
・マグロ
・あさり
・しじみ
・ほうれん草
・小松菜
・卵黄
・大豆製品
(ビタミンC、ビタミンB群、葉酸を多く含む食材)
・新鮮な野菜や果物
・ほうれん草
・ブロッコリー
・レバー
・魚介
・卵
※感染症の恐れがあるため魚や肉、卵の生食は控えましょう。
妊娠23週のチェックリスト
マタニティフォトを考えているなら
おなかのなかにいる赤ちゃんと一緒に写真を撮影するマタニティフォト。おなかが大きくなってきた頃から妊娠8~9カ月頃までに撮影をすることが多いようです。パートナーと一緒に自分たちらしい場所でセルフ撮影をしてもいいですし、プロに依頼しても。臨月近くになると体調が不安定になって予定通り進められないことが増えるので、早めにどこでどんな風に撮影をしたいかを検討しておくとよいでしょう。
外食するときに気をつけたい食べ物
体調が落ち着いているこの時期、おでかけをしたり外食をしたりすることもあるでしょう。働いている妊婦さんは外で食事をする機会も多くあると思います。おなかの赤ちゃんのためにもしっかり食事をすることは大切ですが、妊娠中は免疫力が下がっているため普段よりも食中毒になりやすい傾向があります。
殺菌されていないナチュラルチーズやスモークサーモン、生の魚介類などは注意が必要です。また、生ハムや生肉はトキソブラズマ感染の恐れがあるため、控えましょう。
塩分や脂肪分が多いメニューを頻繁に摂取していると妊娠合併症や体重過多の要因にもなります。1食単位で考えるのは難しいかもしれませんが、1日のトータルで栄養バランスのとれた食事ができるよう心がけてください。
しっかりと紫外線対策を
妊娠によるホルモン分泌の変化に伴い、肌が敏感になったり、色素沈着が起こりやすくなったりしています。妊娠中の一時的な変化ではありますが、この時期に受けた肌へのダメージは産後にも残ってしまいます。しみやそばかすもできやすくなっているので、日焼け止めクリームを塗ったり、帽子やUVケアグッズを活用して、しっかりと紫外線対策を。肌に触れるグッズやクリームは、低刺激のものを選ぶといいでしょう。
妊娠23週:パパにできることは?
気分転換や体重増加の抑制のためにも、一緒におでかけをしてみるのはいかがでしょうか。ママの体調がすぐれないようであれば無理をする必要はありませんが、もし気分が沈んでいるように見えたら、ふたりでできるリフレッシュ方法として散歩やウォーキングがおすすめです。少しからだを動かしたり、おしゃべりをしたりすると、心が軽くなることがあります。日々変化していくからだ、漠然とした未来への不安などからネガティブになってしまいがちな時期ですが、寄り添ってくれるパパの存在は大きな支えになることでしょう。
妊娠23週: お医者さんに聞くことは?
適切な運動量はどれくらい?
体重管理やマイナートラブルの緩和、リフレッシュのためにも日々の生活に取り入れたい運動ですが、妊婦さんのからだや赤ちゃんの状態によっては逆に負担となってしまうことがあります。妊娠中にできる運動にウォーキングやマタニティヨガなどがあります。始める予定がある人はいまどれくらいの運動なら問題ないかは確認しておきましょう。安静にしなくてはならないときの運動は避けてください。
頑固な便秘でつらいときは
妊娠中は、妊娠によって増えたプロゲステロンというホルモンの影響で腸の動きが鈍くなっているので、便秘になりやすくなっています。そのうえ赤ちゃんが心配でおなかに力を入れることに不安を感じてしまい、ずるずると時間が経って便をかたくしてしまう悪循環にも陥りがちです。放っておくと痔の原因にもなるので、辛いときは早めに医師に相談するといいでしょう。妊娠中に服用できる便秘薬を処方してもらえることがあります。
なお、この先も大きくなった子宮が腸を圧迫してますます便秘になりやすくなるので、水分や消化を促す食材を積極的にとる、適度な運動をするなどして、食事や生活も見直していくといいでしょう。
切迫早産で自宅安静と言われたら
切迫早産の診断をされたとき、早産になるリスクを減らすために「自宅安静」といわれる場合があります。自宅安静となったときは外出を控え、なるべく横になってゆったりと過ごすことになります。どれくらいの期間、どの程度安静にして過ごすかは、妊婦さんの状態次第。医師に相談しながらおなかの赤ちゃんをしっかりと守っていきましょう。
妊娠23週:よくある質問
妊娠23週のマイナートラブルはどんなものがある?
妊娠23週の頃に悩まされるマイナートラブルは、腰痛、頭痛、胸やけ、吐き気、立ちくらみ、むくみ、こむら返り(足のつり)、便秘、イライラ、眠気、倦怠感など、さまざま。要因は子宮が大きくなって血管や器官を圧迫したり、ホルモンの分泌による場合が多くあります。
からだの不調はとても辛いもの。解消法のひとつとして、生活習慣を見直すことがあります。姿勢を正す、睡眠をしっかりとる、適度な運動を行う、栄養のある食事をする、ゆったり入浴する、日光を浴びる、つらい場所をマッサージする、リラックスできる時間を作る…など。自分ができそうなことを体調と相談しながら少しずつ取り入れてみてください。
繰り返すおなかの張りや痛み、出血などはマイナートラブルではありません。切迫早産などの可能性がありますので、早めに受診をしておきましょう。
妊娠23週で出産した場合はどんなリスクがありますか?
妊娠22~37週未満の出産は早産と呼ばれます。生まれた赤ちゃんは発達が完全ではないためNICU(新生児集中治療室)にて24時間体制で見守られます。
妊娠23週の段階では、赤ちゃんのからだの機能は発達している途中です。そのため、生存率が低くなってしまったり、障害が出てしまったりする可能性があります。
おなかのなかで正産期(妊娠37~41週)まで育ててあげられるよう、妊娠中は無理をせず過ごすことを心がけてください。