妊娠11週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子

河野照子 先生
医学博士
日本産科婦人科学会専門医
日本周産期・新生児医学会専門医
日本超音波医学会専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠11週に知っておきたい大切なポイントは?
つわりのピークを超えて、だんだんからだが楽になってくる頃。つわりが明けたらやりたかったこと、食べたかったものなどを少しずつ取り入れて、気分新たに妊娠生活を楽しんでいきましょう。そんな妊娠11週頃に気をつけておきたいことや、やっておきたいことをご紹介します。
妊娠11週は妊娠何カ月?
妊娠11週は妊娠3カ月の最後の週です。赤ちゃんのからだには外性器が形成され、この週の終わりごろから男の子、女の子それぞれの変化が始まっていきます。
妊娠11週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠11週:赤ちゃんの大きさは?
この時期の赤ちゃんは1日あたり1.5mmほど大きくなっていて、今週の終わりごろには、頭からお尻までの長さが5cm程度にまで成長します。ふにゃふにゃだった骨は固くなってきて、超音波検査では太ももの骨の長さ(大腿骨長/FL)や頭の大きさ(児頭大横径/BPD)を測ることができるようになります。これらの数値は、赤ちゃんの発育を知るための重要な指標となります。
妊娠11週:赤ちゃんの様子は?
手足には小さな爪が作られ始めます。首に筋肉がついてくるので、これまで前かがみの体勢しかできなかった赤ちゃんですが、だんだんと顔を上げたりするようになります。
妊娠11週:赤ちゃんの発達は?
内臓が完成に近づいていて、それぞれの臓器は少しずつ活動をはじめています。腎臓や膀胱もできていて、羊水の中ですでにおしっこもしています。
妊娠11週:妊婦さんのからだは?
妊娠11週:妊婦さんのからだの様子は?
個人差はありますが、だんだんとつわりが落ち着いてくる頃です。妊娠11週頃に胸が張ったり大きくなってくるのは、授乳に備えて乳腺が発達している最中だから。ブラジャーのサイズが合わなくなってきたと感じたら、マタニティブラを検討してみましょう。
妊娠11週:妊婦さんのおなかの大きさは?
妊娠11週のおなかはまだふくらんでいるようには見えません。ですが、子宮や胸はどんどん大きくなっていて、体重も少しずつ増え始めています。おなかが目立ってくるまであと少しという段階です。
妊娠11週:妊婦さんが気をつけること・することは?
つわりあけの食生活について
つわりが終わって体調が落ち着いてきたら、少しずつ普段の食事に戻していきましょう。ただし、まだ胃腸が敏感な場合もあるので、刺激の強いものは避け、食材選びには慎重になってくださいね。白米、うどん、パンなどは、胃に負担をかけずエネルギーを補給しやすいのでおすすめです。他にも、たんぱく質が豊富な豆腐、卵、白身魚、ビタミンが豊富な野菜や果物など、バランスよく栄養摂取することが大切です。一方、妊婦さんが避けるべき食材(生肉、生魚、生ハム、水銀を多く含む魚介類、ナチュラルチーズ等)については、変わらず注意を続けてくださいね。つわり明けの食欲回復ペースは人それぞれなので、無理せずからだと相談するようにしましょう。
感染症に注意
妊婦健診では、血液検査や腟検査などによって、感染症の有無をチェックします。主な感染症検査項目には、「B型肝炎ウイルス」、「C型肝炎ウイルス」、「HIV(エイズウイルス)」、「梅毒」、「風疹ウイルス」、「クラミジア」などがあります。
これらの感染症は、自覚症状がなくてもすでに感染している場合があり、放置すると妊婦さんや赤ちゃんに深刻な影響を及ぼす可能性があります。早期発見することでリスクを減らすことができるので、妊婦健診での検査はとても大切です。陽性の場合は、医師から詳しい説明と対応策が提案されるので、不安があれば遠慮なく質問をしましょう。また、パートナーが風疹やインフルエンザなどのワクチンを接種することも、妊婦さんや赤ちゃんを守ることにつながります。
頻尿になりやすい
妊娠11週頃になると、ホルモン(プロゲステロン)が増加する影響で、膀胱や尿道の筋肉が緩みやすくなり、尿意を感じる頻度が増えてくるでしょう。血液量が増加し、腎臓が活発に働いて尿を多く作るのも頻尿になる一因です。その上、子宮が少しずつ大きくなり始め、膀胱を圧迫してきます。これにより、膀胱に尿が少ししか溜まっていない状態でも「トイレに行きたい」と感じやすくなるのです。
夜間のトイレ回数を減らすには、寝る前の2~3時間は水分の摂取を減らすように心がけると良いでしょう。膀胱への圧迫を減らすためにも、締めつけの強い下着やズボンは避け、ゆったりとした服装を選ぶようにしましょう。
おりものの量について
ホルモン(エストロゲン)の増加によって、おりものの量が多くなることがあります。これは子宮や腟を清潔に保ち、感染を防ぐための自然な仕組みです。おりものの状態としては、少し粘り気があり透明〜白っぽい色で無臭であれば、正常な範囲内であると考えられます。おりものの中に血が混じっていたり、強い臭い、かゆみや痛みを感じる場合は、すぐに医師に相談することをおすすめします。
妊娠11週のチェックリスト
保険の適用について
妊娠・出産にかかる費用は健康保険の対象外ですが、何らかのトラブルがあって医療処置が行われた場合には、健康保険が適用されるケースがあります。例えば、「妊娠高血圧症候群」や「妊娠悪阻」、切迫早産の検査のために行われた超音波検査などは健康保険の対象になります。民間の医療保険に加入している場合は、帝王切開や合併症治療に対して給付金が支給されるプランもあるので、今のうちに契約内容を確認しておくと良いでしょう。
医療費控除の申請
妊娠・出産には、妊婦健診費から出産費用まで、たくさんのお金がかかります。妊婦健診の補助券や出産一時金などの助成金もありますが、妊婦さんによっては自己負担額が10万円を超えるケースもあります。医療費として年間10万円以上(総所得額200万円未満の場合は総所得×5%以上)支払った場合は、「確定申告」によって還付金を受けることができます。妊婦さんの医療費だけでは10万円を超えなかった場合でも、家族分をまとめて申告することができるので、医療費の領収書は必ず保管しておくことが大切です。
靴の選び方
これから妊娠中期に入っていくと、おなかが大きくなって体重もぐんぐん増えていきます。妊婦さんは、からだの重心が変化することによって転倒しやすくなっているので、今のうちにスニーカーやフラットシューズを用意しておきましょう。妊娠中は足がむくみやすく、サイズが普段より大きくなることもあるので、幅広設計や調整可能な靴がおすすめです。おなかが大きくなると靴を履くこと自体が大変になってくるため、可能なら店舗で試着して、脱ぎ履きのしやすさも考慮すると良いでしょう。
妊娠経過や気持ちを記録する
妊娠経過やその時の気持ちを文字や絵で記録しておくと、赤ちゃんの成長を感じたり、あとで見返したときの励みにもなりますよ。素敵な日記帳を用意してマタニティ日記を付けてみたり、妊婦さん向けアプリを使って思いついたことを手軽にメモしたり、自分に合った続けられそうな方法でマタニティライフそのものを楽しんでくださいね。
歯科健診の予定を組む
つわりが落ち着いて来た人は歯科健診の予定をたてましょう。妊婦さんは、ホルモンバランスの変化で歯茎が腫れやすくなったり、つわりで歯磨きが十分にできなかったりして、歯周病や虫歯になりやすいのです。虫歯を放っておくと、早産や低体重児出産などのリスクが高まるともいわれています。
まだつわりが辛い場合は無理せずに、落ち着いてからで大丈夫。おなかが大きくなってくると長時間座るのがつらいこともあるので、できれば妊娠中期(16~27週)までに済ませるのが理想的です。
妊娠11週:パパにできることは?
そろそろつわりが楽になってくる頃ですが、まだまだ疲れやすく体調や感情の波がある日々が続きます。料理、掃除、洗濯など日常の負担はできるだけ減らしてあげましょう。妊婦健診に付き添って、エコー写真を見たり、医師の話を一緒に聞いてメモを取るのも立派なサポートです。
妊娠11週: お医者さんに聞くことは?
赤ちゃんの首のうしろのむくみについて
妊娠11週頃に超音波検査で赤ちゃんの首の後ろのむくみについて指摘されることがあるかもしれません。これは生理現象により液体がたまっているためで、全ての赤ちゃんにみられます。ただし、むくみが厚い一部の赤ちゃんは、染色体の病気や生まれつきの心臓の病気を持っている場合があるので、医師に相談してみてください。
特別な検査について
妊娠12週前後で「初期スクリーニング検査」や「母体血清マーカー検査」を提案される場合があります。初期スクリーニング検査とは、通常の超音波検査よりも、さらに詳しく胎児の状態を調べることができる検査です。そして、母体血清マーカー検査とは、妊婦さんの血液を採取して、染色体や神経管の先天異常を調べる検査です。スケジュールや内容をあらかじめ確認しておくと準備がしやすいでしょう。
妊婦健診以外での受診方法
妊娠すると、定期的に妊婦健診がありますが、心配なことがあれば健診時以外の時間でも病院を受診することができます。もしものときに備えて診療時間外の電話番号などをあらかじめ確認しておくと安心です。
立ち会い分娩について
パートナーや家族の立ち会い分娩を希望する場合は、可能かどうか事前に病院に確認しておきましょう。病院によっては、立ち会い分娩をする前に講習への参加が必須となっている場合もあります。パートナーとよく話し合い、どのような出産スタイルにしたいのか、今のうちからイメージをふくらませておくと良いでしょう。
妊娠11週:よくある質問
妊娠11週です。マタニティスポーツに興味があるのですが、どんなものがありますか?
つわりが治まって体調が回復してくると、マタニティスポーツの始めどきです。気分転換や体力維持など、妊婦さんの健康にとってもおなかの赤ちゃんにとっても良いことがたくさんあります。例えば妊婦さん向けのエアロビクスやヨガ教室に通ったり、普段の生活の中にウォーキングやストレッチを取り入れるのも良いでしょう。おなかが張っている時は無理して行わず、自分の体調と相談しながら楽しく続けてくださいね。
妊娠11週ですが、軽い出血があって不安です。大丈夫でしょうか?
着床出血にしては少し遅めの時期ですが、ホルモンの影響で子宮内膜が変化し、少量の出血(ピンクや茶色っぽいもの)が起こることがあります。また、妊娠中は子宮頸管の血流が増加して敏感になっており、セックスや軽い刺激でも出血することがあります。少量で止まるなら心配ない場合が多いですが、心配であれば医師に相談するようにしてください。
妊娠11週です。授かり婚なのですが、妊娠中に結婚式と披露宴を行うことは可能でしょうか?
授かり婚のプランを組んでいる式場やパーティー会場は多いので、妊娠中に行いたいのであれば、専門のプランナーさんに相談してみるのがおすすめです。出産までの時間は限られています。妊娠11週なら出産は約6〜7カ月後です。妊娠後期になるとからだも大変になってくるため、結婚式をいつにするか早めに計画を立てると良いでしょう。時間や体力の制約があるため、盛大な式よりも家族や親しい友人だけで行う小規模な式やフォトウェディングを選ぶのも良いかもしれません。体調に合わせて無理のない形をとってくださいね。
妊娠11週でつわりが治まってきたので、セックスを再開したいと思っています。どんなことに気をつけたら良いですか?
最近の健診で妊娠経過が順調であることを確認できていれば、セックスすること自体は問題ないでしょう。子宮は筋肉と羊水でしっかりと守られているため、セックスが胎児に直接影響を与えることはほとんどありません。
妊娠中のセックスは、体調を最優先にして、長時間や激しい動きは避け、優しくリラックスして行いましょう。圧迫感を避けるために、横向きに寝た体位や女性が上になる体位が楽かもしれません。ただし精液には子宮を収縮させる成分が入っているため必ずコンドームの着用を。また、途中で気分が悪くなったらすぐに中断するようにしてください。パートナーと事前に話し合って、不安なことなどを伝えておくと、お互いに安心できるでしょう。