妊娠8週の赤ちゃんの成長・発達と妊婦さんの様子

河野照子 先生
医学博士
日本産科婦人科学会専門医
日本周産期・新生児医学会専門医
日本超音波医学会専門医
よしかた産婦人科勤務
妊娠8週に知っておきたい大切なポイントは?
つわりのピークを迎える妊娠8週。終わりの見えない辛いつわりにメンタルが不安定になりがちです。一方、おなかの中では赤ちゃんがぐんぐん成長しています。手足から小さな指が形成され、肘や腕を曲げることができるようになります。そんな妊娠8週頃に注意しておきたいことや、やっておきたいことをご紹介します。
妊娠8週は妊娠何ヶ月?
妊娠8週は妊娠初期・妊娠3カ月の最初の週です。
妊娠8週:赤ちゃんの成長・発達は?
妊娠8週:赤ちゃんの大きさは?
赤ちゃんの頭からお尻までの長さは2cm程度になりました。頭がからだと同じくらいの大きさで、「2頭身」のような体型をしています。
妊娠8週:赤ちゃんの様子は?
超音波検査では、赤ちゃんの心臓がピクピク動いている様子がはっきりと見て取れるようになります。
妊娠8週:赤ちゃんの発達は?
6週頃からつくられ始めていた軟骨が、徐々に硬い骨へと変化していきます。尾が消失し、手や足の形がはっきりしてきて、小さな指が現れ始めます。指と指の間には水かきのようなひだがありますが、この先成長とともに消えていきます。
妊娠8週:妊婦さんのからだは?
妊娠8週:妊婦さんのからだの様子は?
妊娠8週はつわりのピークを迎える時期。吐き気や嘔吐、食欲不振、胃もたれなどの症状が出て、食事がうまく取れないことがあります。人によって軽い場合もあれば、日常生活に支障をきたすほど強い場合もあります。ホルモンバランスの変化により、強い眠気や疲れやすさを感じることも。赤ちゃんの発育が急速に進む一方で、妊婦さんのからだもホルモンの影響を受けて調整を行っている段階なのです。
妊娠8週:妊婦さんのおなかの大きさは?
おなかはまだほとんど目立ちませんが、体重が少し増えたり、逆につわりの影響で食事が十分に取れず体重が減ったりすることもあります。
妊娠8週:妊婦さんが気をつけること・することは?
メンタルの浮き沈み
妊娠8週頃になると感情が不安定になりがちです。これは、妊娠初期に急増するエストロゲンやプロゲステロンといったホルモンによるもの。これらは胎児の成長や子宮の環境を整えるために必要ですが、同時に脳の神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)に影響を与え、感情の起伏を引き起こします。hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンもこの時期にピークを迎え、つわりや疲労感とともにメンタルにも影響を及ぼします。
また、妊娠に伴う責任感や将来への不安が心に重くのしかかることもあるでしょう。心が不安定なときは、無理せずに睡眠時間を増やしたり、こまめに休息を取るようにしましょう。散歩やストレッチなどで軽くからだを動かすのも効果的です。一人で悩まずに、パートナーや家族、友人などの信頼できる人と気持ちを共有することで、孤独感が和らぐこともありますよ。
眠れなくなる
ホルモンバランスの変化や自律神経の乱れによって、日中の眠気が引き起こされ、夜の睡眠リズムが乱れてしまうことがあります。また、つわりの吐き気や胃の不快感が夜に強まり、眠りにくくなることも。
そんなときは、軽いストレッチや深呼吸をする、カフェイン抜きの温かいハーブティーを飲む、アロマテラピーを活用するなど、寝る前に心身を落ち着かせる時間を作ってみると良いでしょう。睡眠時には抱き枕を使うと、横向きの姿勢が楽になり、眠りやすくなることもありますよ。
頻尿になることも
妊娠8週になると、子宮が少しずつ大きくなり始め、膀胱を圧迫します。これにより膀胱に尿が溜まる容量が減り、トイレに行きたくなる頻度が増えます。また、腎臓の血流が増えることで尿の生成量が普段より多くなり、頻尿につながります。
夜間の頻尿が辛い場合は、水分摂取のタイミングを調整してみましょう。日中は十分に水分を取りつつ、夕方以降は少し減らすと夜間の頻尿が軽減することがありますよ。ただし、脱水症状にならないよう注意してくださいね。
感染症を予防して
妊娠8週は胎児の重要な器官が形成される時期。感染症が母体や胎児に影響を及ぼすリスクを避けるため、意識的に予防することが大切です。手洗いやうがいをこまめにし、人混みではマスクの着用も検討してください。トキソプラズマ感染を防ぐために、生肉や生ハムの摂取は控えて。猫のトイレ掃除やガーデニングの土いじりも控えるか、手袋とマスクを着用して行い、その後の手洗いをしっかりするように気をつけましょう
妊娠8週のチェックリスト
産婦人科の選び方
産婦人科には「分娩対応あり」と「妊婦健診のみ」の施設があります。出産まで同じ場所で診てもらいたい場合は、分娩対応の病院やクリニックを選びましょう。分娩対応がない場合は転院が必要になるので、そのタイミングや提携先も確認しておくと安心です。
産婦人科を選ぶときは、自宅からのアクセス、医療設備、医師やスタッフとの相性、費用、口コミなどを考慮して。信頼関係が大切なので、合わないと感じたら無理せず転院を。里帰り出産をする場合も、早めにリサーチして、分娩予約を入れておきましょう。
血液検査について
妊娠初期の早いうちに妊婦健診で血液検査が行われます。血液検査では、感染症の有無、血液型、風疹抗体、血糖などを調べます。
血圧測定について
妊婦健診では、毎回血圧測定を行います。これは、血圧の推移を把握し、「妊娠高血圧症候群」の有無を確認するためのものです。妊娠高血圧症候群は、妊婦の7~10%に発症し、重症化すると母子の命にかかわります。収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上の場合、妊娠高血圧症候群である可能性があります。妊婦健診で血圧が高めと診断された場合は、医師の指導を受けながら、より注意深く血圧値をコントロールする必要があります。
尿検査について
妊婦健診では、毎回尿検査も行われます。これは、尿タンパクや尿糖の確認をすることで、「妊娠高血圧症候群」や「妊娠糖尿病」の疑いがないかチェックしています。また尿検査では、つわりの重症度も判定することができます。嘔吐を繰り返して食べることが難しくなると、ケトン体という物質が尿の中に現れるためです。このようにさまざまな病気の可能性がわかる大切な検査なので、健診のたびに毎回必要なものなのです。
周囲の人への妊娠報告
妊娠報告のタイミングは人それぞれです。安定期に入るまではパートナーや身近な人にだけ伝えるという人が多いですが、つわりや体調の変化で仕事に影響が出るなら、上司や必要な人に早めに伝えるのも一つの手段です。何か具体的な状況や心配事があれば、それも伝えておくと良いでしょう。
マタニティウェアを購入する
今はまだ目立たないおなかですが、この先どんどん大きくなっていくので、伸縮性のあるマタニティウェアを何枚か用意しておくと安心です。おなかが大きくなる時期にどんな服が必要か(例えば夏なら軽い素材、冬なら暖かいもの)を考えると選びやすいです。最初はマタニティレギンスやワンピースなど、汎用性が高いものから用意すると無駄になりにくいですよ。
妊娠8週:パパにできることは?
この時期はママの体調が不安定になりやすいタイミングなので、パパの気遣いがとても大切になります。いつもママの体調を気にかけて、「何かしてほしいことはある?」と聞いてあげると良いでしょう。つわりで疲れているママのからだを優しくマッサージしてあげるのも喜ばれるかもしれません。
妊娠8週だと赤ちゃんの心拍が確認できる頃なので、一緒に健診に行ってエコーを見たり、妊娠についての本やアプリをチェックして、赤ちゃんの成長を楽しむ気持ちを共有してくださいね。
妊娠8週: お医者さんに聞くことは?
赤ちゃんの心拍
妊娠8週頃は、超音波検査で赤ちゃんの心拍が確認できることが多い時期です。赤ちゃんの心拍は通常、妊娠6~7週頃から見え始めますが、8週だとよりはっきり確認できる可能性が高くなります。パートナーと一緒に健診に行き、感動を共有するのも楽しみの一つです。もし8週で心拍が確認できなかったとしても、週数のズレなどで見えないこともあるので、あまり焦らずに次の健診を待ちましょう。
出産までのスケジュール
今後の準備をスムーズに進めるためにも、出産までのスケジュールを把握しておきましょう。健診のタイミングや分娩予定日のほか、妊娠中に受けるべき検査のことや、マタニティクラス、両親学級などがいつごろあるのか見通しを立てておくと安心です。なお、分娩予定日は、妊娠8~10週頃に赤ちゃんの大きさから決まります。スケジュールのほかにも、日ごろ疑問に思っていることなどを健診の機会に積極的に聞いてみましょう。
病院で取り扱っている出産スタイル
分娩には、「自然分娩」、「帝王切開」、「無痛分娩」などの方法がありますが、病院によっては無痛分娩や帝王切開に対応していないこともあります。妊娠経過やリスク(逆子、前置胎盤、持病など)によっては、選択肢が限られることも。今のうちに、「どんな出産スタイルが選べますか?」と医師に確認しておくと良いでしょう。妊婦さんが楽な姿勢で出産する「アクティブバース」などさまざまな分娩スタイルがあるので、自分はどんなお産がしたいのか、本やウェブで勉強して、今のうちにイメージをふくらませておくと良いでしょう。
妊娠8週:よくある質問
妊娠8週です。流産の危険なサインを教えてください。
おなかがキリキリするような強い痛み、定期的な子宮の収縮、鮮やかな赤い色の出血、ナプキンが必要なほどの出血がある場合は危険信号です。他にも、つわりがピタッとなくなるなど、普段と違う感じがあれば、迷わず病院を受診しましょう。自覚症状がないまま流産してしまうこともまれにあります。
流産の8割以上が妊娠12週未満に起こっており、その原因の多くは赤ちゃん側の染色体異常なので、ママのせいではありません。
妊娠8週ですが、タバコが我慢できません。どうしたら良いですか?
妊娠中のタバコは「百害あって一利なし」です。タバコに含まれたニコチンが血流を減少させ、赤ちゃんの成長に必要な栄養素が不足して、低体重、早産のリスクが上がることがあります。8週は赤ちゃんの器官が作られる大事な時期なので、きっぱりと禁煙することをおすすめします。
タバコを吸いたくなったら、ガムを噛む、水を飲む、深呼吸する、軽く散歩するなど、口や手を忙しくする代替案を試してみてください。「今日我慢できたらおいしいものを食べる」など、自分を励ますご褒美を用意してモチベーションを上げるのも良いでしょう。
妊娠8週です。常に食べていないと胃がムカムカします。どうしたら乗り切れますか?
ホルモンバランスの変化で消化不良が起こりやすくなり、空腹時にムカムカ感が出やすい時期です。空腹になると気分が悪くなって、常に何かを食べてしまう状態のことを「食べづわり」と言います。空腹を避けるためには、小さなおにぎりやビスケットなどを常備して、2~3時間おきに少量ずつ食べるようにしましょう。消化が簡単で胃に負担をかけない、バナナ、りんご、おかゆ、ゆでたジャガイモなどもおすすめです。体重の増加が気になる場合は、春雨、海藻、こんにゃくゼリーなどのカロリーが低めの食べ物も良いでしょう。仕事や趣味に没頭したり、好きなことをして、うまく気分転換しながら乗り切っていきましょう。
妊娠8週ですが、セックスはして良いのでしょうか?
妊娠が正常に進んでいて、特に医師から「控えてください」と言われていない場合、セックスすることは通常問題ありません。ただし、妊娠中は抵抗力が低下しているため、感染予防のためにもコンドームは必須です。おなかがまだ大きくない妊娠8週でも、圧迫される体位や激しい動きは避けて、リラックスできる体位を選ぶようにしてください。おなかの張りや痛み、出血がある場合はセックスを控えて、すぐに医師に相談しましょう。